中日新聞 2013年2月28日
名古屋市交通局の男性バス運転手=当時(37)=が2007年に焼身自殺したのは、職場でのパワハラや過重な労働が原因として、遺族が28日、自殺を公務災害と認めなかった地方公務員災害補償基金の処分の取り消しを求め、名古屋地裁に提訴した。
訴えによると、市交通局は07年、男性が運転する市バスの車内で女性客の転倒事故が起きたとして、責任を追及し、警察の事情聴取に出頭させた。男性は上司に「全く身に覚えがなく、納得できない」と訴え、翌日に焼身自殺した。
遺族側は、市交通局の資料から、転倒事故が起きたのは男性のバスではなく「冤罪(えんざい)だった」と主張。自殺前に、車内アナウンスを「葬式の司会のようなしゃべり方」と注意されたり、乗客への接客態度をめぐり「はっきりした声で」と指導されるなど、心理的負担から、うつ状態だったと訴えた。月50時間を超える違法な時間外労働も長期間続いていたと指摘した。
名古屋市内で会見した男性の父親(72)は「身に覚えのないことで抗議の自殺をした息子の無念を思うと、悔しくてかわいそうで、残念でならない。速やかに公務災害と認めてほしい」と訴えた。
遺族側は08年7月に公務災害の認定を申請したが、基金名古屋市支部長(河村たかし市長)は11年3月、自殺と公務の因果関係が認められないとして「公務外」と認定。その後も審査請求を棄却されたため、提訴に至ったとしている。