「トモダチ作戦に関わったことを誇りに思っている」――。東日本大震災から2年を迎えた11日、米海軍のグリナート作戦部長はワシントンの駐米日本大使公邸でこう挨拶していたが、これは米軍の「本音」じゃない。
というのも、作戦に参加した米兵が「ウソの情報で被曝した」として、東京電力を訴える損害賠償訴訟の原告にどんどん加わっているのである。
「トモダチ作戦」をめぐっては、昨年12月、米空母ロナルド・レーガン乗組員ら9人が東電に対し、被曝によって将来的にがんになるリスクが高まった――と主張。賠償金や将来の医療基金など総額96億円(当時)を求める訴えを米連邦地裁に起こした。この裁判について、原告の弁護士は11日、現時点で原告数が115人を超えたことを明かし、さらに増える見通しを示唆したという。
「原告が増えるほど、陪審員が『日本で被害に遭った米兵はこんなに多いのか』と同情を寄せ、原告に有利な判決を出す可能性が高まる。賠償金も飛躍的かつ比例的に膨れ上がるでしょう」(国際弁護士・湯浅卓氏)
◆東電 巨額賠償で再び破綻リスク
米国では日系企業は大金を取れるカモと見られているし、原発事故を起こした東電が相手なら、世論の共感も得やすい。原告の弁護士は「必ず勝てる」と、元米兵を片っ端から口説いているだろう。
「トモダチ作戦」に参加した米兵は2万4000人もいるから、仮に全員が原告になったら損害賠償の請求額は24兆円にまで膨れ上がる。日本国内でも巨額の賠償負担を抱える東電が「トモダチ」に賠償金を支払える余力がないことは米国の原告も分かっているはず。それでも東電から「カネを取れる」と踏んでいるのは、ウラに「日本政府」の存在があるからだ。
「日本政府が東電に賠償費用として3兆2000億円も投じていることからも分かるように、米国の原告は日本政府が東電を潰す気がないことを見抜いている。だから、東電=日本政府に請求という感覚なのです」(司法ジャーナリスト)
今後、訴訟の矛先が東電以外に広がる可能性もあるという。
「米国には組織犯罪を取り締まるためのリコ(RICO)法があります。仮に日本政府の関係者が東電と結託して情報を隠蔽などした場合、米国の連邦警察が動く――というケースも考えられます」(湯浅氏=前出)
トモダチの輪が広がるほど、東電は再び破綻の危険性が高まり、日本国民の負担が増えるリスクが高まる。
やはり東電は、一度法的整理しておくべきだった。