長時間労働を課して残業代を支払わない、暴言やパワハラを繰り返して退社に追い込む…。いわゆる「ブラック企業」が問題化するなか、厚生労働省は今年度、若者の雇用や育成に積極的な中小企業を「若者応援企業」と認定し、求人面で支援する制度を始めた。いわば国が「ブラック企業ではありません」と“お墨付き”を与える制度だが、東京都で169社が認定されているのに対し、大阪府は37社と伸び悩んでいる。
「若者応援企業」の認定を受けるには、7つの条件をクリアしなければならない。新卒者や若者の定着状況、月平均の残業時間、有給休暇の取得実績など企業側があまり知られたくない情報を公にすることもその1つだ。
ブラック企業は離職率が高く、過酷な残業が課せられるとされる。認定では、そうした不安を少しでも解消するような条件が定められている。「安心して働ける企業を見分ける手がかりにしてもらえれば」と厚労省の担当者は話す。
働く側にとっては、企業を選ぶ有力な指標となる制度だが、関西では大阪が37社、和歌山で7社、兵庫、奈良は3社、京都や滋賀はゼロと伸び悩んでいる。理由として、企業側のメリットが見えにくいと指摘する声がある。
「企業や団体をまわってPRしているが、なかなか認定を受けたいという企業が出てこない」。大阪労働局の担当者はそう話す。
認定を受けた企業には、就職説明会の参加機会を優先的に案内する▽若者応援企業としてハローワークで紹介する−などの利点があるが、関西の企業からは「(出したくない)情報を出すわりにメリットがない。助成金が出るのならよいが…」という反応も多いという。
厚労省の担当者は「金をばらまけばよいというものではない。認定はあくまで良質な企業である印。企業側にもそうした意識を持ってほしい」と話す。
就職情報サイト「マイナビ」編集長の三上隆次さんは「普通は公開されていない情報を就活生が見られるという点はよい」と制度を評価する一方、「企業側にとって、認定を受けることが『ブランド』にならないとうま味がない。制度の認知度をあげて、企業を多く集めないと、かけ声倒れに終わるのでは」と指摘している。