ブルームバーグ、不当解雇裁判で敗訴後も原職復帰認めず、被害者を逆提訴

Business Journal 3月17日(月)

 米通信社ブルームバーグの東京支局から、社員教育を偽装したノルマによって追い詰められたあげくクビ斬りに遭ったY氏(50代前半)が、東京地裁に社員としての地位確認を求め2011年3月に提訴し、12年10月5日の一審判決で全面勝訴したことは、本サイト記事『ブルームバーグ 社員教育を偽装したノルマで追い詰めクビ斬り』にて報じた通りだが、同社のブラック企業ぶりを示す事態を続報する。
 
 一審判決後、ブルームバーグは即日控訴した。その後、原告と被告は12年10月18日に団体交渉した。Y氏の証言によると、この交渉時に会社側は「記者職以外であればY氏の席がある」という主旨の提案をしてきた。Y氏側は、記者職ではないということは、編集デスクにするものと受け取り、「記者職にこだわらない」と返答した。

 ところが、会社側がY氏の配属先として具体的に考えているのは、「本社内でパンなどを社員に配るパントリー業務くらいしかない」と言ったという。パントリー業務は、派遣社員の若い女性が担当しており、およそ記者職とは無縁の職種であることは明らかだ。それに対しY氏は、「記者職以外で復職交渉の余地はない」と回答したという。

 その後も会社側は「記者職以外ならよい」との立場を崩さず、「以前と同一賃金、同一職種が前提」と主張するY氏側とは平行線のままで、折り合いがつかなかった。

 そうした中、13年1月8日に、会社は「通知書」という文書をY氏宛てに送ってきた。それは和解案で、内容は、「解雇を撤回し、復職日の前日までの賃金を支払います」とある。そして、「貴殿は、下記の条件で、復職します」とあり、その下にこうあった。

「(1)職場 (略)貴殿の英語力で従事できる業務としては、倉庫の在庫管理や備品の発注など、いわゆるバックオフィスの業務が考えられます」

「(2)年収 400万〜500万円」(従前の半額程度)

 この案をY氏が拒否すると、同年2月15日、会社は和解金を提示したが、Y氏はその和解案も断った。

 さらに同年3月1日、会社側は「解雇通知(予備的)」をY氏に送付。そこには、「貴殿が記者職以外への復職に応じない以上、会社としては、このことを理由に貴殿を解雇せざるを得ません」と書いてあった。

 そして同年4月24日、高裁判決が下り、一審同様、解雇無効が言い渡された。その後、会社は上告せず、判決は確定した。

●判決に従わず、さらに逆提訴

 しかし、高裁判決後の最初の団交の席で会社側は、「記者職に戻すことはない」と発言。これに対しY氏側は、「会社は裁判で負けたのだから、原職(記者職)復帰させた後、人事異動の必要があれば、提案するべきだ」と述べた。しかし会社側は、「記者職に戻せというのであれば、『雇用関係不存在』の訴訟を提起する」と宣言した。

 こうして解雇無効の判決が出たにもかかわらず、Y氏は職場に戻ることができなかった。

 そして13年7月22日、会社はY氏を相手取り、東京地裁に提訴した。

 訴えの内容は、

1.先の地位確認の判決に基づきY氏が復職することは許さない。
2.会社とY氏の間に雇用契約が存在しないことを確認する。
3.Y氏は毎月、給料分のお金を会社に支払え(解雇無効の判決確定により、会社側はY氏に毎月給料を振り込んでいるが、その分の返納を求める)。

というものだった。

 その後、係争は続いている。

 今回の事件についてどう思うかY氏に質問したところ、「高裁判決を受けて上告を断念したにもかかわらず、復職を受け入れないだけでなく、新たに訴訟を提起してくることは絶対に許せない行為です。日本の国が、解雇無効だと判断しているにもかかわらず、国の判断に従おうとしないのは、日本をバカにしているとしか思えないし、日本の労働者を単なる使用人としか考えていない発想だと思います」と憤る。

佐々木奎一/ジャーナリスト

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