就職活動のルールは?

qBiz 西日本新聞経済電子版 2013年12月24日(火)

就職活動をめぐる経緯

 2015年春に卒業する大学3年生を主な対象にした主要企業の会社説明会が1日に解禁され、就職活動が本格的に始まりました。就職活動をめぐるルールはどんな仕組みで、どのように移り変わってきたのでしょうか。

 −なぜ12月1日に就職活動が始まるのですか。

 「経団連は、採用や選考の指針である倫理憲章で、インターネットでの採用受け付けや企業説明会の開催といった企業の広報活動の開始時期を12月1日以降と定めています。このため12月1日が就職活動の解禁日と位置付けられています」

 「倫理憲章とは、大学生や大学院生の就職活動開始が早まって長期化することを是正するため、経団連が会員企業向けに定めた紳士協定です。2013年11月現在、会員企業1309社のうち、3分の2近い833社が賛同しています」

 −就職協定はいつごろからあるのですか。

 「1928年に、当時の一部の大手企業が中心となり、東京帝国大や慶応大、早稲田大など大学や大企業に呼び掛けて『入社試験は卒業後に行う』と決めたのが就職協定の原型とされています」

 「専門家は、昭和初期の不況下で就職難が続き、就職活動が過熱して学業がおろそかになることを企業側が懸念し、協定締結につながったと指摘しています」

 −最近はどうなっているのですか。

 「就職協定を無視して就職活動開始の時期が早まる傾向にあった97年、今の経団連の前身の一つである旧日経連が『就職協定は有名無実化した。現実には守られておらず、正直者がばかをみる』と主張し、就職協定は廃止されました」

 「しかし、企業側から『一定のルールは必要』との声が上がり、翌年、新たに倫理憲章が生まれました。経団連は2011年3月に倫理憲章を改定し、3年生の12月1日解禁となったのです」

 −安倍政権になってから解禁時期を遅らせるという話がありましたよね。

 「はい。ただし、今の大学2年生からです。早い時期からの就職活動で学業に支障をきたすことのないよう、政府の要請で解禁が3カ月繰り下がり、3年生の3月からになることが決まっています」

 「政府の閣議決定に基づく変更ですので、対象は経団連の全会員企業のほか、他の経済団体にも広がり、名前も『採用選考に関する指針』と改められることになりました」

 −入りたい会社に誰もが入れるといいのですが…。

 「13年3月卒の学生を対象にしたリクルートワークス研究所の調査では、志望者1人当たりの求人数を表す求人倍率は、従業員5千人以上の企業で0・6倍と狭き門です」

 「一方、300人未満の中小企業では3・27倍で、依然として大きな開きがありますが、学生の希望と仕事の実態が合わないミスマッチは縮小傾向にあるとしています」

 「名の知られていない中小企業でも、成長企業はたくさんあります。大学やハローワークの相談窓口の整備も進んでおり、厚生労働省は『早いうちから幅広い視野を持って就活を進め、行き詰まったら早めに相談し、諦めず内定につなげてほしい』と話しています」 

■自分を生かせる企業はある

 大学生のキャリア支援に関わる一橋大の西山昭彦特任教授の話 リーマン・ショック以降、大学生の就職市場は厳しいといわれ続けてきた。しかし、今年は違う。景気が回復傾向にあり、企業の採用意欲は確実に高まっている。ただし、学生の人気が集中する大企業が例年と比べ、大幅に採用者数を増やす可能性は極めて低い。一方、東証1部上場企業は約1700社あり、いずれも日本の頂点に君臨する企業であることに変わりはない。一部の有名企業だけでなく、自分を生かせる優良企業がたくさんある事実を学生はまず知るべきだ。

西日本新聞社

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