(働く人の法律相談)うつ病で労災認められる? 金子直樹

朝日デジタル 2014年5月19日

イラスト・今井ヨージ(省略)

 「あまりにきつい残業が続いたせいで、うつ病になってしまいました。精神疾患でも労災申請をすれば認められるのでしょうか」

 派遣社員の女性から相談が寄せられました。

 心理的なストレスで精神疾患になったとき、どのような場合に労災が認定されるのでしょうか。2011年に厚生労働省が定めた認定基準には、いじめやセクハラ、長時間労働など発症の原因別に、具体的な事例が挙げられています。

 相談者のように長時間労働が原因の場合には、発病直前の1カ月間に月160時間以上▽発症直前の3週間に120時間以上▽発症直前の2カ月間連続して月120時間以上▽発症直前の3カ月間連続して月100時間以上、時間外労働をした場合などと、目安が示されています。

 残業を証明するため、タイムカードをコピーしたり写真撮影したりして証拠をとっておきましょう。タイムカードがなければ手帳のメモでもかまいません。

 長時間労働のほかに、上司や同僚から「能なし」など人格を否定するような言葉を毎日言われ続けるようないじめのケースや、身体への接触を含むセクハラが継続して行われた場合なども、労災が認められる例とされています。

 労災保険給付の申請書には会社側が書く欄もありますが、会社の協力がなくても申請できます。

 相談者のように派遣社員でも、労災申請ができます。派遣元が労災を認めない場合でも、労働基準監督署が労災を認定すれば、補償給付を受けられます。また派遣先会社は派遣元会社と同じく労働安全衛生法上の責任を負うため、労災保険でまかなえない分の損害については、派遣先会社に直接、損害賠償を請求することもできます。

 労災保険は経営側がお金を出し、健康を害した労働者を支える仕組みです。労働災害は起きないこと、起こさないことが一番ですが、発病したら一刻も早く管轄する労働基準監督署に相談し、申請をしてください。

 (弁護士・金子直樹)

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