ブラックバイト:被害に遭わないために 学生が労組結成も

毎日新聞 2014年06月08日

アルバイト白書づくりについて議論を交わす川村准教授(中央)とゼミ生ら=札幌市豊平区の北海学園大で(写真は省略)

 「事前に示された時給と違う」「遅刻したら罰金をとられた」−−。こんな労働法規(ワークルール)に触れる違法なアルバイト「ブラックバイト」が横行している。被害に遭わないように、大学のゼミが実態を明らかにするアルバイト白書づくりに取り組んだり、学生自身が労働組合を結成したりする動きが出ている。北海道内での対策の最前線を追った。【千々部一好】

 ◆問題は労働法無知

 北海学園大経済学部の川村雅則准教授(労働経済)のゼミでは2011年度から毎年、アルバイト白書づくりに取り組んでいる。学生たちのバイトの実態に迫ろうと、同級生らに聞き取り調査を行い、情報を集めている。

 ゼミでは2、3年生16人が調査結果や自らの経験を基に討論。「居酒屋のバイトで、ゆず酒とゆず梅酒の注文を間違えたら、代金を負担させられた」「電話でカニを売るバイトをしていたら、父親の知り合いからそこはブラック企業だと聞かされ、即刻辞めた」など、さまざまな実例が報告された。

 3年の男子学生(21)は1年のとき、飲食店のバイトで調理を担当した。週3、4日のつもりだったが、「明日も出勤できるよね」と店から言われるままに働いた。バイト代は月14万円になったが、大学の講義に出られなくなった。男子学生は「断ればいいと頭では分かっていても、なかなか言いだせなかった。9カ月後になって、ようやく辞めることができた」と振り返った。

 また、飲食店でバイトをしている3年の女子学生(21)は「タイムカードは30分刻みで、それ未満は切り捨て。午後10時以降の深夜割り増しも付いているかはわからない。ゼミで学んだことを、バイト先で言う自信はまだありません」と打ち明ける。

 白書は聞き取り調査の結果のほか、労働契約書の見方や労働法規の基礎的知識などの内容も盛り込んで、年内に完成させる予定。

 川村准教授は「車を運転するには自動車教習所に通って道交法を学ぶ。しかしバイトの場合は労働法を知らなくてもできてしまう。雇う側もワークルールを知らないケースが多い。読んだ学生が共感できるようなわかりやすい白書にしたい」とゼミ生に発破を掛ける。

 ◆弁護士招き学習会

 「労働組合って何でしょう?」。札幌市豊平区の北海学園大で5月30日にあった学生バイトの労働組合「札幌学生ユニオン」の学習会。講師の浅野高宏弁護士(38)は集まった約10人の学生に質問を投げ掛け、労組の役割や結成の仕方などについて説明した。

 同ユニオンは北海道大生を中心に1月に結成された。組合員は約10人。バイト体験の聞き取りや月1回の学習会などを続けている。

 この日は昨年から始まった労働法規の知識を問う「ワークルール検定」の初級テキストを教材に学んだ。共同代表で北大4年の下郷沙季さん(24)は「ワークルールは知らないことだらけ。労働条件の問題点を洗い出し、どうやって経営者と話し合いの場をもったらいいかを考えていきたい」と話す。

 ◆ホットライン開設

 連合北海道は5月30〜31日、「ブラックバイト24時間労働相談ホットライン」を初めて開設した。新入生がアルバイトを始めるこの時期に合わせ実施した。

 寄せられた相談は50件。「仕事上の苦情を外部に出さないと誓約書を書かされた」「午前2時まで働かされるのに交通費が出ない」など労働法規に違反した相談も多かった。

 連合北海道の担当者は「バイトを終えてから深夜に電話してくるケースもあった。どこに相談したらいいか分からなかったという学生も多く、今後も続けたい」と話している。

 大半の学生が経験するアルバイト。職業体験の貴重な機会であるバイトを正しい条件のもとで行える環境づくりが求められている。

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