朝日デジタル 2014年7月22日
勧誘も謝罪も「外注」で――。利用者の個人情報が大量流出した通信教育大手ベネッセホールディングス(HD)は、利用客らの問い合わせなどに応じる電話の窓口業務を派遣会社に委託した。社員だけでは対応しきれないためだが、謝罪業務を委託する企業姿勢を疑問視する声もある。
特集・ベネッセ情報流出
窓口業務の派遣会社員は、情報流出が発覚するまでは新規会員の勧誘業務をしていた。
元派遣会社員によると、派遣会社から「お仕事の募集」と書かれたメールが届いたのは11日。14日から今月末まで、専用フリーダイヤルに対応する、「毎日怒られる仕事」だという。時給は1100円。ベネッセが情報流出を発表した9日に、派遣契約を打ち切られた人が対象だ。
12日には謝罪の仕事について、「ネット上などで口外しないように」と注意喚起するメールも届いた。
「企業責任感、倫理観はもっと高めなければ。謝罪対応は一日も早くやりたい」。17日に記者会見したベネッセHDの原田泳幸社長は、そう話していた。会見では、16日までに約5万件の問い合わせがあったと説明した。
この元派遣会社員は「個人情報は漏れないから安心して、と言って勧誘してしまい、傷ついているところに、謝罪の仕事を回す企業感覚が信じられない。謝罪も派遣にやらせるなんて、倫理観がない」と憤る。
ベネッセの担当者は「本来は社員が対応すべきだが受けきれない件数だった。一刻も早く対応すべく、同じ認識を持つ業務委託会社とともに対応している」と説明する。
■信頼性・優先順位に疑問
〈企業のリスク管理に詳しい藤江俊彦千葉商科大教授の話〉 人件費削減のために使っている派遣社員に、人手が足りないから会社としての謝罪窓口をやらせるのでは、信頼性に疑問を持たれかねない。OBを雇用するとか、こういう事態に対応できるようにしておくのも企業のリスク管理だ。利用者側は情報流出への対策を求めており、対応の優先順位を間違えていないか、もう一度分析する必要がある。(河原田慎一)