2014年9月25日連合集会における全国過労死家族の会代表の挨拶

労働者保護ルール改悪阻止行動開始宣言集会

全国過労死を考える家族の会
代表世話人  寺西 笑子 

1. 日本労働組合総連合の皆さまのご奮闘に心から敬意を表します。
本日は「労働者保護ルール改悪阻止行動開始宣言集会」の開催にあたり、「全国過労死を考える家族の会」を代表して連帯のご挨拶を申し上げます。

さて、私たちは、ある日突然に過労死・過労自死で愛する家族の命を奪われました。

夫や妻、娘や息子など、かけがえのない大切な家族を失った悲しみを乗り越え、過労死のない社会の実現をめざして活動しています。

私の夫は18年前に過労自死しました。会社利益のためにサポート体制がない中、達成困難なノルマを強要され、その成果を出すために年間4000時間を超える長時間過重労働を強いられました。さらに過度の𠮟責を受けたことでうつ病を発症し、2ヵ月後に飛び降り自殺を図りました。

こうした過労死の悲劇は四半世紀も繰り返されており、今や若者の職場に広がり過労死は増え続けています。

まじめに働く人の命を守るには、もはや過労死を防ぐ法律が必要と考え、私たちは「過労死防止法」制定運動に立ち上がりました。

2.報道でご存じのように、今年6月20日、念願の「過労死等防止対策推進法案」が全会一致で成立し、11月に施行されることとなりました。

この法律の最大の意義は、初めて過労死の防止を国および自治体の責務として定めるとともに、その対策として、調査研究、啓発、相談体制の整備、民間団体の活動支援などを盛り込んだ点にあります。

また、11月を「過労死等防止啓発月間」と定め、過労死の防止を国民的課題としていく新たなステップが踏み出されます。

本法律は、過労死の防止を国の責務と明記した画期的な内容で、歴史的な一歩と言えます。

私たちは、この法律を実効性のあるものにしていくために、関係団体と連携して一層努力していく所存であります。

3.一方、政府は過労死防止法が成立した4日後の6月24日に「『日本再興戦略』改訂2014」を閣議決定し、働き方改革の柱として「新たな労働時間制度」の創設を提起しています。

「新たな労働時間制度」は時間ではなく成果で評価すると言います。夫の働く姿をみて思うのは、成果をあげることを求められるほど労働時間が長くなることです。

一定の年収以上の労働者に限るとしても、1週40時間、1日8時間の規制を外し、残業という概念をなくし、残業代ゼロが合法になると、痛ましい過労死が増えないかと懸念します。

過労死をなくすためには、正しい労働時間管理、サービス残業の撲滅、年休取得の促進などを確実に実施することが求められます。

さらには、36協定の特別延長時間の見直しやインターバル休息制度の導入など、長時間労働の規制を進める必要を痛感しています。

4.近年、入社数ヶ月でうつ病になり娘や息子が自死された親御さんや幼い子供を抱えた妻が悲愴な状態で相談に来られています。

懸命に育てた息子や娘を亡くした親は、親自身の人生までもが奪われ、乳飲み子を抱えた妻は、明日からの生きて行くすべさえ奪われるのです。ましてや「これから」という人生を奪われた本人の無念は、如何ばかりでしょうか。

これからの日本社会を背負って行く若者が過酷な労働環境に追いやられ、優秀な人材を亡くすことは、日本の未来をなくすことであります。

5.ぜひ、労働者側で労働政策審議会に参加されている連合の皆さまへ安全に働ける労働環境を築いてくださるよう切にお願い申し上げます。

過労死はあってはなりません。

「残業代ゼロ」ではなく、「過労死をゼロ」にしようではありませんか。

今後とも連合の皆さまと連携させていただき、過労死防止活動を進めていきたいと願っております。本日の集会も過労死のない社会の実現につながることを祈念して、過労死家族の会からの連帯挨拶といたします。

この記事を書いた人