毎日新聞 2014年10月17日
◇トラック運転手が減額分53万円支払い求めて東京地裁に
仕事内容は同じなのに定年を境に賃金を減らしたのは労働契約法に違反するとして、契約社員のトラック運転手が16日、勤務先の「長沢運輸」(横浜市西区)に減額分約53万円の支払いを求めて東京地裁に提訴した。非正規雇用の現役社員が提訴した例はあるが、定年後の再雇用で働く労働者が訴えるのは初めて。
訴えたのは、東京都大田区の鈴木三成さん(60)。訴状などによると、鈴木さんはタンク車でバラセメントを運搬する業務に従事。今年3月に定年を迎え4月からは1年契約の嘱託社員として働き始めたが、業務内容や勤務時間、責任は定年前と変わらないのに、賃金は定年前から約25%削減されたという。労働契約法は、仕事が同じ場合、有期契約を理由に賃金に格差を設けることを禁じている。
高齢者雇用安定法は65歳までの雇用延長を義務づけているが、事務職などで賃金が下がるのは、勤務時間や責任が軽減された場合がほとんどだ。代理人の只野靖弁護士は「再雇用での賃下げは当然視されているが、現業系で同じ仕事なのに賃金が下がるのは理不尽だ」とし、鈴木さんは「賃金だけ下がるのは許せない」と話す。
長沢運輸は「訴状が届いておらず、状況が把握できないのでコメントできない」としている。【東海林智】