(働く人の法律相談)忘年会のセクハラ、会社に責任? 佐々木亮弁護士

朝日デジタル 2014年12月15日16時30分

 年の瀬といえば忘年会。あなたの職場でも予定されているのでは。「お酒が入ると女性社員の手を握ったり、ひざに座らせたりしようとする上司がいて困ります」という悩みを女性たちから聞くことがあります。この場合、セクシュアルハラスメントとして会社に責任を問えるのでしょうか?

 男女雇用機会均等法は事業主に対し、職場での性的言動で労働者が不利益を受けたり、職場環境が害されたりしないよう、適切な取り組みをすることを義務づけています。ただ、忘年会といった飲み会は、通常は職場の外の居酒屋などで行われます。

 結論から言えば、職場外で行われたとしても、会社に責任を問える可能性は十分にあります。

 その飲み会が、会社の公的な行事であればもちろんです。そうでなくても、恒例化していたり、ほとんどの従業員が参加したりする場合も、半ば公的行事といえます。

 例えば、部長や課長などその部署で強い権限を持つ人が発案し、事実上、全員が参加しなければならない、というような場合です。二次会、三次会などでも、その実態によっては、会社に使用者責任を問えることがあります。

 過去の裁判では、会社の忘年会で、男性従業員が女性従業員に対して、背後から抱き付き、抱き付いた姿勢での写真撮影の強要などを行ったことがセクハラとされ、会社にも賠償命令が出た事例があります。

 また、職場の飲食会の三次会後、帰宅途中のタクシーのなかで、男性会社役員が女性従業員に無理やりキスなどのセクハラ行為をした事件も、裁判所は役員本人の不法行為を認定。さらに役員が女性を三次会に誘ったことや、飲食会が業務と密接な関係があると認め、使用者に対して損害賠償が命じられました。

 酔っていることがセクハラの言い訳になると思うのは大間違いです。被害に遭った場合は我慢せずに、すぐに労働組合や弁護士に相談することをお勧めします。(弁護士・佐々木亮)

 ◇ポイントは

 ●二、三次会や帰宅のタクシー内でもセクハラに

 ●業務との関連や参加を上司に指示されたかが鍵

 ◆この連載が『会社で起きている事の7割は法律違反』(朝日新書)になりました。この欄のご意見は〒104・8011朝日新聞労働チームへ。ファクス03・5541・8428、メールt−rodo@asahi.com

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