運送業の運転手不足が深刻化 長時間労働、若者集まらず

福井新聞 2014年12月19日

夜中の出発を控える大型トラック。若者が集まらず運転手は不足している=福井市内(省略)

 福井県内運送業の運転手不足が深刻化している。長時間運転やきつい荷役などで、若者が集まりにくいことが背景にある。打開策として、国は女性ドライバーの倍増を目標に「トラガールプロジェクト」を始動。県トラック協会も、体の負担軽減を図る装着型ロボットスーツの着用体験を行うなど、女性の取り込みに動き始めた。

 ■少ない休み

 県内で大型トラックを運転する40代の川辺亮三さん=仮名=は、日曜昼に会社に行き、夜には東京に向かう。使える交通費は決まっているため、高速道路を使うのは滋賀県に入ってからだ。

 福井から東京、大阪などの間を1週間に3往復し、週に3日は車中泊になる。川辺さんは「家でゆっくりできるのは土曜の夜だけ。家族サービスは全然できない」。

 川辺さんが勤める会社のドライバー約40人のうち30代以下は5、6人しかいない。川辺さんは「新卒なんて最近見てない。自分より若い人はみんな中途採用。休みは少ないし、新卒の若い子が続けるのは難しいだろう」と話す。

 厚生労働省によると、国内産業の就業者の平均年齢は42・0歳だが、大型トラック運転手は46・2歳、中小型トラックは44・9歳。福井貨物自動車(本社福井市)の清水則明社長(60)は「関西や中京でも募集をかけているが、都市部ほど人は集まらない」と打ち明ける。

 ■若者奪い合い

 「倒産寸前の企業を見つけ、そこの若手社員を引っ張るんですよ」と話すのは、県内のある運送業者。「仕事がきつくて人気がない職業だが、『歩合で勝負できる。走れば金になる』と言えば、入社する若者もいる」。人の奪い合いは激しい。

 業界は1990年の国の規制緩和で、新規参入のハードルが下がり、国内事業者は約4万から6万超に急増。県トラック協会長も務める清水社長は「需要と供給のバランスが崩れ、安い料金で仕事を受ける業者が増えた。その上デフレで、運賃を上げられない状況が続いてきた」と話す。

 大型トラック運転手の年間所得額は全産業の平均に比べ約50万円安く、労働時間は500時間以上長い。川辺さんは「4月の消費税増税で、タバコを(低価格の)『わかば』や『エコー』に替えたドライバーは多い」と苦笑する。

 ■7割人手不足

 県が中小企業を対象に8月に行ったアンケートでは、約7割が「人手不足」「人手不足の懸念がある」と回答。人手不足が原因で「新しい仕事を受注できない」という意見もあった。

 解消策の一つとして政府が掲げるのは「女性の社会進出」だ。人手不足が著しい貨物運送業でみると、女性の進出状況は2・4%で、全産業平均の42・8%を大きく下回る。国土交通省は今年9月、女性ドライバーの愛称を「トラガール」とし、ホームページに「トラガールサイト」を開設。2020年までに女性ドライバーを現在の約2万人から倍増させる目標を定めた。ただ「女性を雇うとなると、専用トイレや更衣室など設備投資が必要になる」といった課題を指摘する経営者もいる。

 一方、作業の負担を減らす取り組みも始まっている。県トラック協会は9月のトラックフェスタで、女性ドライバー育成のため、荷物の持ち上げを補助する装着型ロボットの着用体験イベントを初めて実施。同協会は「女性や高齢者を取り込むために、今後はロボットスーツの積極的な導入を検討する必要がある」と話している。

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