【Q&A】新しい労働時間制度 「年収1075万円以上」 成果で賃金決定

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SankeiBiz 2015.1.19

(SANKEI EXPRESS)

 厚生労働省は、働いた時間ではなく成果で賃金を決める新制度「高度プロフェッショナル労働制」の案を示しました。

 Q 現行の制度とどう違うのですか

 A 労働基準法は1日8時間、週40時間を超える労働や深夜・休日勤務には割増賃金の支払いを企業に義務付けていますが、新制度では一定の要件を満たす労働者をこの規制から外します。

 Q 一定の要件とは

 A 厚労省案は、年収が1075万円以上で高度な専門知識を持ち、職務の範囲が明確な人としています。具体的には株や債券のディーラー、証券アナリスト、新薬などの研究開発担当者といった職種を想定しています。適用には本人の同意が必要です。ちなみに管理職は現行制度でも残業代支払いの対象外で、新制度は適用されません。

 Q 働き方はどう変わりますか

 A 働いた時間に関係なく賃金が決まるので、労働時間をより自由に選べるようになり、短時間で成果を出せる人は好都合かもしれません。経団連は、時間ではなくアイデアで成果を生み出す職種が増えており、そうした人たちの働く意欲が高まると期待しています。

 Q 働き過ぎになる懸念はありませんか

 A 労働組合や過労死した人の遺族は、新制度が導入されれば「残業代ゼロ」で際限なく働かされ、過重労働に陥る懸念があるとして反対しています。このため厚労省案では、社員が会社にいる時間を企業がきちんと把握するよう義務付けるなどの健康確保措置を求めています。

 Q 対象者はどの程度になるのですか

 A 今回の案は労組の反発に配慮して年収や業務の要件を厳しくしたため、対象となる労働者は少ないとみられます。ただ、経団連はかつて同様の制度導入を目指した際に「年収400万円以上」の労働者とするよう求めた経緯があります。労働組合側は、将来的に要件が緩和され対象者が拡大する恐れがあると警戒しています。

 ≪サービス残業横行 根強い企業への不信≫

 一部の労働者を労働時間規制の適用除外とする新しい制度の骨子案が公表されたが、労働組合や過労死遺族の不信感は強い。サービス残業をさせるなど現行の労働法すら守らない企業が横行しているためだ。まずは企業が働かせ方のルールを守る社会が当然にならない限り、新制度の対象者が過重労働に陥る懸念は消えない。

 厚労省は新制度の対象者を「企業と対等に交渉できる人に絞った」とする。過重な成果目標を拒否し、自分の能力に見合った働き方をできる人が対象との考え方だ。

 ただ、あらかじめみなした時間を超えて働いても企業に残業代の支払い義務がない既存の裁量労働制の導入企業をみると、対象者の出退社時間をあらかじめ決めるなど、自己裁量を事実上認めない形の不適切な運用をしている企業も少なくない。

 厚労省によると、2013年度、全国の労働基準監督署の監督指導を受けた後に企業が支払った残業代は約123億円、対象労働者は約11万5000人に上る。新制度の対象にならない労働者からも批判の声が強いのは、法律を守らない企業が多くあるからだ。

 新制度がいったん始まると、経済界が対象者の拡大を求める可能性がある。制度を乱用し対象者に過重な成果や長時間労働を強いる企業が出てくる恐れもある。

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