http://www.sankeibiz.jp/macro/news/150907/mca1509072344017-n2.htm
SankeiBiz 2015.9.7
経団連の榊原定征会長は7日の定例会見で、今年8月1日に面接を解禁した大学生の就職活動(就活)日程について、「10月以降に会員企業にヒアリングし、対応を協議する。(元に戻すことも)選択肢だ」と将来のルールの見直しに言及した。ただ、来年の就活日程については「抜本的な変更はできない」とし、今年と同じく8月解禁となる公算が大きい。
経団連は平成28年4月入社予定の学生に対する、企業の選考開始を前年から4カ月繰り下げ、8月からとするガイドラインを定めた。政府が求めた「学業優先」の方針に応え、経団連は加盟する主要企業に日程の順守を要請した。
しかし、ガイドラインは外資系企業や経団連に加盟していない大手企業に対する拘束力を持たない。このため、昨年同様に4月から面接などの選考を始め、早い段階から内定を出す企業も多く、学生や大学側から懸念の声が上がっていた。
首都圏にある私立大就職課の担当者は「経団連加盟企業でも、解禁以前に面談と称して、役員面接を行い、内々定や合格といった表現で、事実上の内定を出している」と、実態を明かす。また、大手就職情報誌の調査では、8月1日時点で内定を獲得している学生が6割に達するなど、就活の8月解禁は形骸化しているのが実情だ。
さらに中小企業では、他の大手企業に内定が決まったため「内定を辞退します」という学生からの通告が8月中旬以降、急増した。人事担当者は「いかに採用人数を確保するか」に頭を悩ませている。中小企業が多く加盟する日本商工会議所の三村明夫会頭は「真面目にやったところが損をして、しわ寄せが中小企業に来るというのは看過できない」と語る。
榊原会長は就活の8月解禁について「就活期間がより短くなり、理系学生や帰国する留学生にとってはメリットがある」と強調する。来年も現状維持を基本路線に検討が進む見通しだ。ただ、経団連加盟企業の“抜け駆け採用”など、是正すべき点は少なくない。産業界がどう足並みをそろえるかが課題となる。(平尾孝)