働く女性の希望、ヤフーCEO出産 「仕事が一番重要」に“批判”も?

http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/151003/cpd1510030635002-n3.htm
SanKei Biz 2015.10.3

双子の妊娠を発表した米ヤフーのメイヤーCEO。産休・育休に対する同CEOの姿勢に、賛否の声が上がっている(ブルームバーグ)

 米インターネット検索大手ヤフーの最高経営責任者(CEO)、メリッサ・メイヤー氏(40)が、自身のブログで妊娠を発表、双子の女の子を12月に出産する予定だ。同氏は「3年前息子を出産したときと同様に準備し、ずっと仕事を続ける」としている。

 メイヤー氏は2012年、トップの職にありながら出産して、新たな道を切り開いた。母親になることを会社経営の妨げにしないという決断は、エグゼクティブ志望の若く優秀な女性らに希望を与えるものだった。

 「メイヤー氏は、彼女の後に続く女性たちに新しい選択肢を提示した」と、女性向けフィットネスブランド「ダンスキン」の元CEOで、働く女性を支援する団体「ウーマン・イン・アメリカ」の会長を務めるキャロル・ホックマン氏は評価する。もちろん、メイヤー氏は「新たな道を示そうとする意味がある収入を得ている」とも指摘した。同氏の昨年の報酬額は、5910万ドル(約70億8960万円)だった。

それでも、自身の妊娠・出産は男性経営幹部が親になるのと同じだというメイヤー氏の考え方に、刺激を受ける女性も多いだろう。ミシガン大学ロス・ビジネススクールの学部長、アリソン・デービスブレイク氏は「メイヤー氏は仕事を続けながら女性が子供を持つことが、もっと当たり前のことになり得ることを示している」と語る。

 一方でマイナス面は、メイヤー氏がヤフーの認める有給の16週間の産休制度を利用しない前例を作ってしまったことだ。バブソン・カレッジで社会人教育を担当するイレイン・アイゼンマン氏は「仕事が一番重要だという従業員に対する明らかなメッセージだ」と指摘する。

 CEOに就任した翌年の2013年に、メイヤー氏が従業員の在宅勤務を制限して、家族を大切にする選択の幅を狭めたことはよく知られている。

 アイゼンマン氏は「これを母親である前に仕事が優先というメッセージだと解釈するなら、とんでもないことだ」と語る。

 一方、デービスブレイク氏は「人生において仕事と家庭を両立させていくメイヤー氏の生き方は後に続く世代の先駆けであり、1980年前後に生まれた世代は、画一的な出産・育児制度ではなく、自分に合った解決策を探している」と主張する。

 米国は先進国で唯一、有給の出産休暇が義務化されていない。産後休暇、育児休暇などの制度は、企業によってばらつきが大きい。有料動画配信で世界最大手のネットフリックスは8月に、男女問わず新たに親になった従業員に対し、1年間有給で育児休暇を取ることができる制度を始めたが、これは米国では最も寛大な制度の例といえるだろう。(ブルームバーグ Laura Colby、Carol Hymowitz)
 

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