毎日新聞2016年10月20日
http://mainichi.jp/articles/20161020/k00/00m/040/133000c
運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機(福井県高浜町)の運転延長を巡り、原子力規制委員会の審査対応をしていた同社課長職の40代男性が4月に自殺し、敦賀労働基準監督署が労災認定していたことが19日分かった。1カ月の残業が最大200時間に達することもあり、労基署は過労自殺と判断した。
男性は「管理監督者」に当たるとされ、労働基準法で定める労働時間の制限は受けない。ただ会社側は残業時間や健康状態を把握、配慮する義務がある。2基は7月7日の期限までに規制委の審査手続きを終えなければ廃炉が濃厚で、関係者によると男性は極度の繁忙状態にあった。
関電は原発への依存度が高く、再稼働は経営に直結する問題。男性の自殺について、関電は「コメントは差し控える」としている。
関係者によると、男性は技術者で工事関係の課長職。審査手続きの一つ、設備の詳細設計をまとめる工事計画認可申請を担当していた。数万ページに及ぶ資料にミスが見つかるたびに、規制委への説明に追われていた。
労働時間は1月から急増。2月の残業は約200時間と推定され、3月から東京に出張して資料作成や規制委の応対に当たった。3、4月の残業も100時間前後とみられる。4月中旬、出張先の都内のホテルで自殺しているのが見つかった。体調が良くない様子で同僚から心配する声があったという。
再稼働に向けた審査対応業務を巡っては、厚生労働省が労基法で定めた残業時間制限の適用除外とする通達を出している。通達が出た2013年時点で申請のあった原発が対象で、高浜1、2号機は対象外だった。
規制委は6月、高浜1、2号機の運転延長を認可した