不法占拠、怒らないイタリア 勝手に食堂、劇場、工房…
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朝日新聞デジタル ローマ=河原田慎一 2019年9月3日14時30分
〔写真・図版〕ビル内には飲食ができるコーナーがあり、住民や支援団体のメンバーが運営方針を議論していた=ローマ、河原田慎一
イタリアで移民問題を取材していて、不思議に思っていたことがあった。滞在許可を持たない「不法移民」とされる人が国内に約50万人いるとされるが、公園や路上などで暮らすホームレスの人の姿は、日本に比べ少ないように思えるのだ。では彼らはどこで寝泊まりしているのか。捜してみるとそこは、廃虚になった建物だった。
もちろんイタリアでも、所有者に無断で土地や建物に立ち入ることは違法だ。だが行き場のない人が集まって建物を「占拠」し、支援する人々がそこを拠点に社会運動を展開する、というのをイタリアではしばしば見かける。日本でもし同じことをすれば、「犯罪行為では?」と世間の目が厳しそうだ。だが、イタリアでは比較的すんなり受け入れられ、街の中に溶け込んでさえいる。なぜそんなことが可能なのか。素朴な疑問をぶつけるために、ローマの中心部にある廃虚に向かった。
ローマの中心駅「テルミニ」から南東に20分ほど歩くと、街路の一角を占める7階建ての大きなビルが現れる。もともとは社会保障を担当する公社が入っていたが、10年ほど前から使われず、廃虚になっていたという。今そこが、イタリアで家賃が払えず家を追われた人や、同国にやってきた移民たちの生活の拠点になっている。
ビルは、地域の住民にも「スピ…