Uber Eatsが4年で流通総額8700億円、課題山積でも急成長の内実
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191018-00217555-diamond-bus_all&p=1
2019/10/18(金) 6:01配信 ダイヤモンド・オンライン
Uber Eatsが4年で流通総額8700億円、課題山積でも急成長の内実
ber Japan執行役員でUber Eats 日本代表の武藤友木子氏 Photo by Yuhei Iwamoto
フードデリバリーサービスの「Uber Eats」。配達員のトラブルなどの課題も山積だが、グローバルで見ると、4年で流通総額80億ドルにまで拡大した。9月に開催されたカンファレンス「FOODIT TOKYO 2019」のセッションには、Uber Japan執行役員でUber Eats 日本代表の武藤友木子氏が登壇。サービスの「核心」を語った。(フリーライター こばやしゆういち)
【この記事の画像を見る】
● 4年で売上8000億円、レストラン数22万店にまで拡大
Uber Eatsは2015年、カナダのトロントでサービスをスタートした。わずか4年で流通総額は80億ドル(約8700億円)、稼働レストラン数は22万店を超えるという(いずれも2018年実績)、世界最大のフードデリバリーサービスに成長した。
日本では2016年9月にサービスを開始。東京2区の150店舗からはじまったが、1年後には1000店舗、2年後には3500店舗、3年を待たずに1万店舗を超えるまでに成長している。
さらに、今年10月には消費増税があったが、食品のテイクアウトやデリバリーは軽減税率の対象となり、税率は8%に据え置き。デリバリーの需要はさらに高まるという予測もある。Uber Eatsにとっては本来であれば追い風となるタイミングだ。
9月25日に開催された、飲食業界向けカンファレンス「FOODIT TOKYO 2019」のパネルディスカッション「飲食店の機能拡張〜デリバリーやソーシャルダイニングは飲食店をどのように変えるのか?〜」には、Uber Japan執行役員でUber Eats 日本代表の武藤友木子氏と「ソーシャルダイニング」サービスを提供するキッチハイクの共同代表・COOの山本雅也氏が登壇。飲食店の機能を広げる新しいビジネスの可能性と未来を話し合った。
パネルディスカッションのなかで武藤氏は「出前の文化が昔から根付いている日本だが、そこにはさまざまな制約があった」と、次のように指摘している。
「日本全体で飲食店は約60万店。しかし、そのなかで出前を行っているお店は3万店ほどでしかありません。人材の確保が難しく、出前をしたくてもできない。あるいは、かつて出前をしていたけれど、もう人を抱えられなくなって出前をやめざるを得なくなったというお店もあります。ようするに、配達人を自前で抱えておくのが前提だったゆえに出前ができなくなっているわけです」
● デリバリーで来店客は減らない、追加売り上げになる
Uber Eatsは、その母体でもある配車サービスUberの仕組みを活用することで、自転車やバイクに乗った「配達バートナー」を街中に配置し、いつ・どこで発生するか分からない飲食ニーズと飲食店、そしてそれらを効率よく繋ぐ配達パートナーをマッチングすることで「配達人不足」を解消。出前をしたくてもできないという飲食店の制約をクリアしたばかりか、新たな出前需要を掘り起こすことにも繋がったと説明する。
「登録店舗のなかには、いままでの来店客が出前を取るようになって、結局は売り上げが伸びないのではないかという不安を持つ飲食店さんが少なくありません。しかし実際には、デリバリーが追加売り上げになっています」
Uber Eatsのユーザーは「いわゆる『おひとりさま』が大多数」だが、その一方で、これまで出前を取ることが少なかった「ファミリー層やパーティの需要が伸びている」と武藤氏は言う。
「これまで飲食店の売り上げは、テーブルや椅子の数、営業時間が”キャップ”になっていました。いくら売り上げを増やそうとしても、こうしたキャップを超えることは不可能だったんです。デリバリーは、これらの制約を取り払うことができます。それこそが飲食店の機能拡張ということだと思います」
たしかにデリバリーだと、店内が満席でも出前注文は受けられる。中食市場の拡大に伴って拡大しつつある「おひとりさま需要」はもちろん、パーティ需要などさまざまな出前ニーズに対応することができるため、単純に売り上げが上乗せされるということだ。
サービス設計面では、ユーザーの利便性がクローズアップされているが、飲食店サイドにとっても「シンプルで簡単」なことにこだわるだけではなく、おいしい料理を提供したいという飲食店の「思い」にも応えられるような設計を心がけているという。
「デリバリーの場合、せっかくの料理が冷めてしまうんじゃないかと思われがちです。しかしUber Eatsは、注文から配達完了までを30分で実現しています。30分のうちには調理時間も含まれていて、料理を作り終わってからの配達時間だけでいうと10分強。この『10分強』を実現するため、つねにアナリストが計算して、配達パートナーの配達範囲を需要に応じてコントロールしているんです」
● 将来的にはドローンでのデリバリーも
Uber Eatsが掲げるミッションは「豊かな食生活をいつでも誰にでも」。このため、ただデリバリーを代行するだけではなく、飲食店とユーザーの双方が満足できるサービスづくりを目指していると語った。
「いま、わたしたちは、飲食店が本来のホスピタリティや料理のクオリティ向上に専念できるような状況をサポートするための開発を進めているところです。その一方、ドローンを活用したデリバリーで遠隔の方にも都心と同じような料理を提供していけるような仕組みも研究中。もちろん、いますぐに実現できるものではありませんが、将来的に必ず実現したいと考えています」
● SNSではトラブル報告、労組立ち上げなど課題も山積
登壇はここで終了したが。直近にはUber Eats関するトラブルがSNSで話題を集めた。あるフリーランスライターが、30分ほど注文の遅れた商品を受け取り拒否したところ、配達員が商品をマンション共有部分に投げ捨てた。これに対してUber Eatsのサポートに問い合わせたところ、「(配達員が)個人事業主だから関与できない、勝手に警察に連絡しろ」と回答したという騒動があった。
本件についてあらためてUberJapanに問い合わせたところ、「ビジネスモデルが新しいという実情はありますが、Uberは市場とお客さまに責任を持って運営をしています」と回答。サービスの品質維持のため、「悪質だと客観的に判断される行為についてはパートナー・お客さまへの警告など必要な措置を取っています」とした。また、今回の騒動について、「このような事態に対し深刻に捉えております」として、ガイドラインの再周知を含めた取り組みを進めるという。
これと並行してUber Japanは9月30日では労災保険の適用されない配達員向けに保険制度(対象は配達員がスマートフォンのアプリで配達の注文を受けて食事を届けるまでの期間。医療見舞金は25万円、死亡見舞金は1000万円を上限とする)を発表。一方では10月3日には、Uber Eats配達員の有志が、労働組合ウーバーイーツユニオンを立ち上げている。
サービスは拡大する一方で、制度作りにはまだ課題が見えるUber Eats。今後の成長に向けた同社の手腕が問われる状況だ。
こばやしゆういち