24時間営業や年中無休をやめても売り上げ伸びた? ロイヤルホストの働き方改革は「人材こそ宝」 (1/5)

24時間営業や年中無休をやめても売り上げ伸びた? ロイヤルホストの働き方改革は「人材こそ宝」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200105-00010004-fnnprimev-ind&p=1
2020/1/5(日) 18:03配信 FNN PRIME

〔写真〕画像:FNN PRIME

ロイヤルホストがさまざまな「働き方改革」を実施

「2017ユーキャン新語・流行語大賞」のノミネート語に選出され、2019年から関連法が施行されている「働き方改革」。国を挙げての取り組みとなったことから、もはや知らないという人はいないのではないだろうか。

【画像】働き方改革で「従業員の心にゆとりができ、サービスや接客も向上する」

このように各所で叫ばれる以前から「働き方改革」を推し進める企業がある。ファミリーレストランの「ロイヤルホスト 」だ。2017年には24時間営業の店舗がゼロとなり、2018年は外食産業では当たり前の年中無休に切り込み、元日休みを含む年3日の店舗休業日を設定。

さらに2019年には社員に7連休の取得を促したり、「働き方改革課」を新設したりするなど、次々と施策を展開しているのだ。外食産業と言えば、客の利便性を保つためにも長時間営業や年中無休が必須だったはず。

それがなぜロイヤルホストは、このような「働き方改革」を率先して進めてきたのだろうか? 同社経営企画部の小池真一郎部長と働き方改革課の北見忠広課長に話を聞いた。

24時間営業をやめても売り上げは増加

ーー2017年にファミリーレストランの代名詞ともいえる24時間営業の店舗をなくした。営業時間はどのように推移してきた?

小池:ロイヤルホストは1971年に1号店がオープンしたのですが、当初から地域や時代に合わせた営業時間で運営していました。特にバブル時代の営業時間は長く、1980年代は最大で約半数の店舗で24時間営業をしていました。

しかし、携帯電話の普及やコンビニエンスストアの台頭など世の中が変わっていく中で、夜に集まる場としてのファミリーレストランのニーズが減り、これまでも立地の特性や時代に合わせて個店別に営業時間を見直しています。

過去10年を振り返ってみると、2009年には24時間営業の店舗が65店あり、その平均営業時間が19.3時間。以前は朝7時から深夜2時までの19時間営業が基本でしたが、2011年から営業時間の短縮に取り組み、そして2017年には、全店舗の半数以上の158店舗で営業時間の短縮を行い、原則として営業時間を9時から24時としたことで、現在では平均の営業時間が15時間にまで短縮しています。

これに合わせて24時間営業の店舗も年々減少していき、2016年に唯一の24時間営業店であった府中東店(東京)が翌年1月末に早朝、深夜の営業時間を短縮したことで、2017年2月から24時間営業の店舗がなくなりました。

このように、昨今叫ばれている働き方改革に合わせて営業時間の短縮に取り組んだのではなく、以前から立地特性と労働環境改善の両面から営業時間の見直しを行ってきました。

ーー営業時間を短縮することで売り上げが減ったのでは?

小池:営業時間を短縮した分、その時間帯の来客数は減少しましたが、食事のコアタイムであるランチタイムとディナータイムにサービスの向上と美味しい料理の提供に注力したこと、また品質の高い食材を使ったロイヤルホストらしい商品がお客様のご支持をいただいたことで客単価が上がり、営業時間の短縮による客数減を補ったことで、2017年、2018年と売り上げは前年を上回ることができました。

北見:サービス面で言えば、朝夜の営業時間を短縮したことによって、ピークタイムに社員やリーダー格のパートの方を常に配置できるようになったことですね。料理の提供時間や後片付けが早くなり、余裕ができたことでお客様への気配りもさらにできるようになったのだと思います。

人材こそ宝、労働環境を少しでも良くするために店休日を設定

ーー営業時間の短縮に加え、店舗休業日を設けた理由は?

小池:営業時間を短くしても毎日営業していると、特に店長は休日もあまり休めた気がしません。例えば「従業員が風邪を引いて人手が足りない」「お客様にコーヒーをこぼすトラブルがあった」などという連絡は休みの日でもあります。

このような状況ですので、やはり精神的な負担があったと推測します。店舗休業日を作ることで、何の心配もなく心から休める日にしてもらいたいというのが狙いとしてありました。

また2018年は元日とゴールデンウィーク明けなど年3日の店舗休業日を設けました。やはり元日は多くの人にとっては特別な日で、ここで従業員がしっかり休んで新年を迎えてもらって、新たな気持ちで働いてほしいという思いはかねてからありました。

特に2018年に元日を休みにしたときは、「初めて家族でお正月を過ごせました」「初詣や親戚まわりに行きました」といった声が聞かれ、従業員にとってはインパクトのある施策だったようです。

ただし、正月という書き入れ時にお店を閉めることになるので、その分、日頃からご利用いただいているお客様にはご迷惑をおかけする事になります。また、業績上では良い点ばかりではありません。

しかし、今のこの人手不足がますます進む中で、特に外食産業においては、人材こそは宝です。そういった中で従業員の労働環境を少しでも良くして、長く働いてもらえる会社にしていくということで、なくなる売上・利益よりも、得るものの方が将来に向けては大きいと考えています。

ーー2019年から取り組んでいる「社員の7連休取得」は外食産業において大胆な施策だった。現在までの取得率は?

北見:2019年の1月からスタートし、社員626人のうち上半期で全社員の76.9%となる479人が取得しています。通期で見ても、同年11月末までで、約86%が1回は7連休を取得できています。

現場の声としては、社長が「7連休を取るように」と先陣を切って言ってくれていることから、休みを取りやすいと聞いています。

小池:人事評価シートに「7連休の取得」という項目もあり、これも連休が取りやすい環境に繋がっていると思います。

ITやテクノロジーを活用して労働の効率化も

ーー営業時間の他に行っている働き方改革はある?

小池:わかりやすいところでは2017年からお掃除ロボットを店舗に導入しています。閉店後の夜中にロボットが動き、翌朝のオープン前にロボットだけでは綺麗にできなかった箇所を従業員が掃除しています。以前は閉店後の掃除に1時間ほど掛かっていました。加えて、業務用の大きな掃除機を使い、椅子と机を動かしながらの掃除となるので結構な重労働でした。

北見:その他で言うと、最新型のPOSレジを全ての店に導入しました。これにより、店長など社員が担当していた1日の売り上げを締める「レジ締め」をボタン一つでお金も触らずに自動的にできるようになりました。それまでは売り上げなどのデータをパソコンに一つ一つ入力する必要もあったのですが、レジでボタンを押せば完了するようになりました。

小池:また、厨房の機器もここ数年で新しいものに変えています。他のファミリーレストランでも取り入れていると思いますが、オートフライヤーやコンベアオーブンを導入しています。

その代わりに、ロイヤルホストらしいオムライスやパスタなど、コックがフライパンでの調理に集中しやすい環境を作っています。

外食産業は接客、調理の面でオートメーション化していく方向もあると思いますが、私たちは人が行うことで価値が高まる接客や、コックがひと手間かけて作る料理などの美味しさに人が集中できるようにしたいので、IT化できるところは変えていこうと進めています。

ーーなぜここまで、率先して働き方改革を進めている?

小池:私たちが展開する外食産業は、働く従業員の気持ちがとてもサービスや料理に影響をしやすい業種です。労働環境が良くなればなるほど、従業員の心にゆとりができ、サービスや接客も向上する。そして、おいしい料理が作れることにつながると考えています。

ーー社長が率先してやっていくことが働き方改革でのポイントだった?

北見:それが社長の方針だと思います。2019年11月からは、私が課長を務める働き方改革課ができました。組織として働き方改革を進めていくというメッセージだと受けとっています。

私たちロイヤルホストの役割は、ファミリーレストラン初の全店舗禁煙化や店舗休業日の設定など、外食産業の中で、リーディングカンパニーとして、しっかりと働き方改革を推進する必要があると考えています。

働き方改革を進めて変わった従業員の意識とは?

ーーこのように働き方改革を進めてきた中で、従業員の意識で一番変わった部分は?

北見:「やればできる」と従業員が思えるようになったことです。正直に言いますと、「元日を休む」と初めて宣言したときには、ほとんどが「絶対に無理だ。こんなにお客さまが来てくださり、売上も高いのになぜ休むのか?」と思っていました。

しかし、今となっては元日を休むのが当たり前になり、逆にそれを誇りにまで思ってくれる従業員が増えてきています。

さらに、7連休取得を進める際も、今までなら「無理だ。」という意見が出てきたかもしれませんが、社長と全国を回り、店長や料理長と「どうやったら休めるのか。休むためには、何が問題になるのか」というディスカッションを重ねたことで、従業員の意識を変えることができたと思っています。

ーー今までは良かったことを聞いた。最後に改革によって生じたデメリットはあった?

小池:今はほとんどないですけれども、営業時間の短縮を始めた当初は、一部のお客様から「早朝に開いていて欲しかった」というお声をいただきました。朝の時間帯は、日課としてコーヒーなどを飲まれる常連さんが多かったからだと思います。

北見:2018年の店舗休業日は元日、5月、11月でしたが、2019年から2020年の年末年始は12月31日、1月1日と連休にしたことで、食材のロスが多少出るようになりました。2日間続けてお店を閉めるとなると、安全・安心を担保するために、破棄しなければいけない食材が出てきました。食品ロスにも取り組んでいる中で改善していきたいと考えています。

2019年には働き方改革課を新設したことで、さらなる改革を進めると思われるロイヤルホスト。これからも外食産業のリーディングカンパニーとして目が離せないだろう。
 

この記事を書いた人