2011/09/05 毎日新聞
飲料水配送会社に勤めていた08年8月に自殺した兵庫県尼崎市の男性(当時27歳)の両親が近く、過労でうつ病を発症したのが原因だとして、会社に計約8300万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴する。男性は就職難の中で得た仕事を失いたくないと思い働き続けたといい、両親は「厳しいノルマを課され、心理的負荷が大きかった」と主張している。
訴状などによると、男性は大学卒業後約5年間、アルバイトをしながら正社員職を探し、08年4月に大手飲料メーカーの配送業務を行う「日東フルライン」(大阪市住之江区)に就職。自販機の補充業務を担当した。同年7月から1人で業務に就いたが、夏場で販売量が増加。早朝出勤や深夜退勤が重なり、8月2日早朝、自宅で首をつって自殺した。
両親は「過労によるうつ病」として労災を申請し、大阪西労働基準監督署は昨年6月に認定。タイムカードでは、うつ病発症前1カ月の時間外労働は約104時間、3カ月平均は約81時間だった。
同社代理人は取材に「週休も取っていて過労とは考えていない」としている。
両親によると、男性は採用が決まった際、「きつい仕事みたいだが、やっと正社員になれたから頑張る」と張り切っていた。しかし、7月初旬ごろから帰宅が遅くなり、職場日報には「倒れそうです」と書かれていた。
森岡孝二・関西大教授(企業社会論)は「過労死や過労自殺が若年化している。正規雇用されても過労死しかねないという、就職を巡る若者の地獄絵図を見るようだ」と話す。【牧野宏美】