民主党厚生労働部門会議は16日、国会で継続審議中の労働者派遣法改正案から、「製造業派遣」と仕事のある時だけ契約を結ぶ「登録型派遣」の原則禁止など、主要部分を削除した修正案を了承した。現行法案には自民、公明両党の反発が強く、10年4月の国会提出から1年半以上も実質審議に入れないまま。このままでは雇用政策が先に進まないと判断し、「骨抜き」批判は覚悟の上で大幅譲歩に踏み切った。
08年秋のリーマン・ショック後、製造業を中心に「派遣切り」などが横行したことを踏まえ、民主、社民、国民新3党がまとめたのが現行法案だ。派遣労働者は約122万人(11年6月時点)で、うち法案の対象となる製造業は約9万人、登録型は約20万人。現行法案が成立すれば、30万人近い派遣労働者が保護の対象となるはずだった。それだけに社民党の福島瑞穂党首は16日の会見で「重要な柱が骨抜き。換骨奪胎そのものだ」と厳しく批判した。
「製造業派遣」と「登録型派遣」の禁止は、元々の民主党案には入っていなかった。しかし、政権交代を前に民主党は労働者保護を強く打ち出す社民、国民新両党との連携強化を狙い、法案に両党が主張する製造業・登録型派遣の原則禁止を盛り込んだ。
ところが、今度は自民、公明両党が「企業の経営が圧迫される」として反発し、審議入りできない状態となった。派遣労働者保護を象徴する法案とはいえ、「たなざらし」が続けば次に想定する、派遣労働者や契約社員ら「有期雇用」の人たちを保護する法改正に着手できない。「修正後もマージン率(派遣料金と派遣社員の賃金の差額の比率)を公開する案は残る。現状を放置する方が罪深い」(連合系民主党議員)との指摘もあり、成立を最優先して自公両党に歩み寄る道を選んだ。
修正案は早ければ今国会で成立する見通しだ。製造業・登録型派遣の原則禁止に関しても今後の検討事項には残った。それでも製造業派遣の禁止は民主党マニフェスト(政権公約)の目玉だけに、同党内にも不満がくすぶる。【山田夢留、鈴木直】