写真: 参加者は2000人超。黄色を身に着けた人が多かった=24日、千葉県船橋市で(早川由紀美撮影)
野田佳彦首相の地元・千葉県船橋市で二十四日、関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼働に抗議するデモがあった。中心になったのは、東京の中央線沿線の複数の脱原発グループ。総武線で船橋まで行こうと呼び掛け、参加者は地元の人も含め二千人超(主催者発表)に。ゆるやかな個人のつながりで、都県境を越えての大規模なデモが実現できるのは、なぜなのか。今どきのデモの成り立ちを追ってみた。 (早川由紀美)
午後零時半すぎ、JR三鷹駅。スニーカーやアロハシャツなど何かの形で黄色を身に着けている一群がいた。黄色は総武線の車体に使われている色だ。
黄色いジャンパースカートを着ていた会社員人見沙操さん(25)=東京都国分寺市=は、デモに参加するのは初めてという。
「電車で行くのが面白いと思った。この後、歩くのは怖いけど」
阿佐ケ谷や高円寺などで次々と、黄色を身に着けた人が乗り込んでくる。一目で参加者と分かるため、交流も自然と生まれる。一車両はほぼ満員となり、都県境を越えて千葉に入ると拍手が起きた。
「脱原発杉並」などの市民グループが船橋でのデモを決めたのは、再稼働が正式決定した直後だった。元新聞記者で弁護士の日隅一雄さんが十二日に死去する直前、ツイッターで野田首相の地元で声を上げることを望んだことも、一つのきっかけとなったという。
「黄色」などの細かい情報が広がるのも、このツイッターが果たす役割が大きい。ツイッターはインターネット上で、短文を投稿できるサービス。特定の投稿者を登録すると、その人が投稿するたびに見ることができる。
その短文を広めたいときは、自分がもう一度投稿すれば、自分を登録している人の目に留まる。こうして連鎖的に情報が伝わる。東京電力福島第一原発事故後、放射能の影響を心配する人たちなどが情報収集に使う中でつながりも生まれ、情報共有の輪も格段に広がっている。
西荻窪駅から乗り込んだ翻訳家の池田香代子さん(63)は「若い人たちの思い付きはすごい。脱帽する」と話した。旧来の動員型のデモとの違いが出る理由を「いわゆる左翼の人たちは論理で原発に反対してきたけど、今は一人一人が存在をかけて『もういやだ』と感情を吐露している」と分析していた。
(東京新聞)