朝日新聞 2013年11月25日
神戸港で約34年間、アスベスト(石綿)を扱う仕事を続け、2001年に肺がんで死亡した男性(当時54)の妻が出した労災申請が神戸東労働基準監督署にいったん退けられた後、一転して認定されていたことが分かった。今月15日付。
妻から労災として特別遺族給付金の請求を受けた同労基署は10年1月、がんの発症と石綿の因果関係が認められないとして不支給処分を決定。妻はこれを不服とし同9月、国を相手に不支給決定取り消し訴訟を神戸地裁に起こしており、裁判が続く中での異例の認定となった。妻は裁判を取り下げる方針。
裁判で問題となったのは、石綿繊維が原因で肺にできる「石綿小体」の数値。国の労災基準は「肺1グラムから石綿小体が5千本以上」で、下回る場合は作業内容や暴露歴から総合的に判断するとしているが、男性は2551本だった。
原告側によると近年、石綿小体の数値が基準以下でも労災と認める判決が相次ぎ、「基準は合理性がない」と指摘した例もあったという。同労基署は今回の決定について「裁判の証拠などから男性が高濃度の石綿に暴露していると推認できたため」としている。