五輪の裏方、相次ぐ契約終了 「私たちは使い捨て」

朝日DIGITAL 2017年5月11日
http://digital.asahi.com/articles/ASK416664K41UTIL011.html

スポーツ庁、JSCとスタッフの契約関係(図表省略)

 昨夏のリオ五輪で日本選手を支えたスタッフ33人が3月31日で契約を終えた。再契約は半年後に1度だけ可能だが、すでに別の仕事に就いたケースもあるという。背景には、有期雇用が5年を超えると無期雇用の権利が付与される労働契約法の「5年ルール」があり、有期雇用の問題が五輪スタッフにも影響している格好だ。

 33人は、五輪など国際大会で代表選手らの強化を支える「ハイパフォーマンス・サポート事業」のスタッフ。2008年度に始まった事業を引き継ぎ、スポーツ庁が日本スポーツ振興センター(JSC)に業務委託している。筋力トレーニングの指導や栄養管理、映像分析など各分野の専門家が雇用され、水泳、柔道、体操など15競技・種目をそれぞれ担当した。

 JSCが13年1月に定めた規程では、契約は1年ごとで期間は計4年。この後はもう1度だけ4年間、五輪は2大会のみ関わることができるが、その際は半年の空白期間が必要になる。

 ある男性スタッフは選手らから引き続きサポートを頼まれたが、ロンドン、リオの2大会に携わっており、規程に阻まれた。「五輪が終わった後、仕事への評価も再就職の助言もなかった。私たちは使い捨て」と悔しがる。リオ大会で分析に関わった別のスタッフは「4月からも多くの競技で世界選手権がある。東京五輪でメダル量産と言いながら、強化の継続性はどうなるのか」と憤る。

 東京五輪に向けて再契約を目指すスタッフの中には空白期間中、競技団体などに短期で雇われるケースもあるが、2大会に関わっていたり、安定した雇用先を求めたりと、すでに企業などに就職したスタッフは少なくない。

 JSCで人事を担当する幹部は、4年で契約を区切る理由を「五輪は4年に1度のプロジェクトだから」としつつ、労働契約法の5年ルールも要因に挙げる。「5年以上雇うと、スタッフが望めば無期契約しなければいけなくなる。非常勤より常勤の形を取りたいが、スポーツ庁が予算を持ち、一定の枠がある以上、我々は柔軟に対応できない」と話す。

 労働問題に詳しい指宿昭一弁護士は「今回のケースは5年ルールの趣旨に反している。雇用の安定を図るためにできた法律が働き手のマイナスになるのはおかしい」と指摘している。(野村周平)

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