日本経済新聞 2013/10/25
25日発表の9月の全国消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除くベースで前年同月比0.7%上がり、4カ月連続で上昇した。値上がり品目数は226品目まで増え、値下がり品目数とほぼ並んだ。ただ、賃金が上がるには時間がかかるため、物価上昇分を差し引いた実質賃金は下落基調が鮮明だ。物価と賃金の綱引きの行方が、デフレ脱却の焦点になっている。
「物価が上がるのは、日本経済が健康な状態を取り戻しつつあるということ」。甘利明経済財政・再生相は同日の記者会見でこう評した。
値動きの激しい生鮮食品を除く指数を見ると、9月は前月より6品目多い226品目が値上がりし、値下がりした231品目とほぼ並んだ。電気代とガソリン代の上昇が物価上昇の半分程度を占めるが、値上げの動きは広がっている。生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価指数も前年比横ばいとなり4年9カ月ぶりにマイナスを脱した。
デフレ期に大きく値下がりした薄型テレビやパソコンを含む「教養娯楽用耐久財」の指数は前年同月比0.4%上がり、1992年1月以来の伸び率となった。調査会社BCN(東京・千代田)によると液晶テレビの家電量販店での9月の平均単価は前月から6%上昇した。高精細の4Kモデルを含む大型サイズの売れ行きが堅調だ。
一方で、家計の購買力は下がっている。厚生労働省がまとめた8月の実質賃金指数は前年同月比2.0%の低下。2カ月続けて下がり、3年8カ月ぶりの大きな減少だ。足元では猛暑などの天候不順で品薄になった生鮮野菜が大きく値上がり。9月の総合指数は前年比1.1%の上昇と伸び率を高めており、実質賃金は一段と圧迫されている。
家計は生活防衛に走っている。キユーピーが7月に出荷価格を引き上げたマヨネーズ。月4回だった特売を1回に減らした都内のスーパーは「特売に客が敏感に反応するようになった」と話す。日経POS(販売時点情報管理)によると、9月はキユーピーの500グラム入りマヨネーズの94%が特売で買われた。
昨年秋以来、持ち直してきた消費者心理は、夏場にかけて改善傾向が一服している。来年4月の消費増税を前に小売りの現場では駆け込み需要も発生し始めているが、消費の足腰の強さは、冬のボーナスや来春の賃上げが物価上昇を上回るかがポイントになりそうだ。