http://www.chunichi.co.jp/s/article/2016042190204517.html
中日新聞 2016年4月22日
2007年に自殺した名古屋市交通局のバス運転手山田明さん=当時(37)=の遺族が、自殺は過重労働やパワハラが原因として、地方公務員災害補償基金(東京)に公務災害を認めるよう求めた訴訟の控訴審で、名古屋高裁は21日、請求を棄却した1審名古屋地裁判決を取り消し、「死亡は公務に起因する」とする判決を言い渡した。
遺族側は山田さんが過重な時間外労働に加え、車内アナウンスの話し方を上司に注意されたり、車内で起きた転倒事故の責任をなすり付けられたりして心身に負担が重なった結果、うつ状態になり自殺に追い込まれたと訴えていた。昨年3月の1審判決は山田さんの労働状況を「質量とも過重だったといえず、心理的負荷が強かったとは認められない」と指摘した。
これに対し、孝橋宏裁判長はこの日の判決で「時間外労働は月60時間を超え、心身の余力を低下させた可能性がある」とした上で「不適切な言葉での指導や転倒事故の取り調べが4カ月間に重なり、強い精神負荷だった」と結論づけた。転倒事故も、被害を訴えた女性客の証言と乗車記録との食い違いから「山田さんのバスで発生したと断定することは困難」とした。
山田さんは転倒事故について警察や職場の事情聴取を受けた翌日の07年6月13日、焼身自殺した。山田さんの父勇さん(75)は記者会見し、「判決で息子は浮かばれた。市交通局は何をやってきたんだという思いは今もあるが、息子の命の代わりに職場環境は少しずつ良くなってきているとも思う」と話した。
地方公務員災害補償基金名古屋市支部は「今後の対応は基金本部と協議したい」とのコメントを出した。