点字毎日 2016年7月3日
http://mainichi.jp/articles/20160630/ddw/090/040/021000c
厚生労働省は8日、労働条件や職場環境を巡ってトラブルとなった場合に活用する「個別労働紛争解決制度」の昨年度の利用状況をまとめた。相談件数は8年連続で100万件を超えた。このうち労働者と事業主の間の個別紛争の事案は約24万件で「いじめ・嫌がらせ」の内容が最も多かった。4月に施行された改正障害者雇用促進法の苦情処理やトラブル解決の仕組みは、この制度を基本に作られており、相談への対処の仕方など障害者の働く現場でも参考になりそうだ。
同制度による相談の窓口となるのは、都道府県の労働局と労働基準監督署に置かれた総合労働相談コーナー。ここで解決せずにトラブルが長引いた場合は、労働局長による「助言・指導」が入るという手続きに進む。それでも解決しない場合は、弁護士や大学教授など第三者委員が入った紛争調整委員会へと進む。ここで解決を図るための「あっせん」が出される。
昨年度の個別紛争の相談は24万5125件。大半は労働者からの相談だった。相談内容は「いじめ・嫌がらせ」が22・4%で最も多かった。次いで「解雇」が12・7%、辞めたいのに辞めさせてもらえないといった「自己都合退職」が12・7%、「労働条件の引き下げ」が8・9%など。
このうち労働局長の「助言・指導」の手続きに進んだのは8925件。紛争調整委員会による「あっせん」にまで実際に進んだケースは4679件。「あっせん」に進んだ中で、トラブルとなった双方が参加して合意が成立したのは1837件で合意率は39・3%だった。ここで解決に至らない場合、労働審判や民事訴訟に進むケースもある。
あっせんや「裁判での和解」にまで進んだ場合は、その多くが金銭の支払いで解決しているのが実態。金銭上では解決してもいったん「争い」となり信頼関係がこじれると、結局は退職に至るケースが多いと言われている。
改正雇用促進法では、労働局長に「勧告」、紛争調整委員会に「調停委員による調停など」の権限も持たせている。【濱井良文】