労働時間記録 使用者に義務 EU司法裁が判決 各国に法制化求める (5/16)

 労働時間記録 使用者に義務 EU司法裁が判決 各国に法制化求める

 しんぶん赤旗 2019年5月16日【国際】
 
 【ベルリン=伊藤寿庸】欧州連合(EU)のEU司法裁判所(所在地ルクセンブルク)は14日、労働者の毎日の労働時間を記録するよう使用者に義務付けることを加盟国に求める判決を出しました。残業時間だけでなく労働時間全体を記録することが、原則週48時間労働を定めたEUの労働時間指令を履行し、労働者の権利を守るために必要だとの判断です。今後、各国で法制化が求められます。
 スペインの労組「労働者委員会」(CCOO)がドイツ銀行をスペインの裁判所に訴えていた訴訟で、スペイン高裁がEU司法裁に判断を仰いでいました。同国では、使用者に残業時間の記録だけを義務付けるとの最高裁判例がありますが、これがEU法に合致しているかどうかが争点でした。
 判決は、各労働者には労働時間の制限と1日・1週間単位の休息期間を受ける基本的権利があり、EU加盟各国には、基本権憲章や労働時間指令によって認められたこの権利を保障する義務があると指摘しました。
 そのうえで、各労働者の1日の労働時間を記録するシステムがなければ、労働時間や残業時間を客観的に信頼性あるやり方で決定できず、労働者の権利、安全や健康を守れないと述べました。
 判決はまた、雇用関係において労働者は弱者であり、使用者が労働者の権利の制限を押し付けるのを予防する必要があるとの原則を改めて述べています。
 ドイツ労働総同盟(DGB)のアンテンバッハ全国執行委員は判決を歓迎。「ドイツでは長年、未払い残業がまんえんしてきた。労働時間と賃金を盗むことで使用者は年間180億ユーロ(2兆2200億円)をポケットに入れている」と指摘しました。
 

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