氷河期世代、集中支援 やっと本腰 厚労省、自治体・企業に連携要請
東京新聞 2019年5月30日 朝刊
厚生労働省は二十九日、バブル崩壊後の就職難で安定した職に就けなかったり、引きこもったりしている「就職氷河期世代」の集中支援策を公表した。就職の実現や正社員への移行に向け、都道府県と企業が連携する新たな枠組みを作り、支援の実施計画や目標を求めるのが柱。高齢になって生活困窮に陥るのを防ぐため雇用を安定させ、将来的な社会保障費の膨張を防ぐ狙いがある。
政府が六月にまとめる経済財政運営の指針「骨太方針」に盛り込む。
厚労省によると氷河期世代は一九九三年ごろ〜二〇〇四年ごろに高校や大学を卒業した。三十代半ばから四十代半ばに当たり、同じ年齢でも浪人や留年などで卒業年が違えば当てはまらない場合がある。就職が決まらないまま高校や大学を卒業した学生は、〇〇年は約十二万人に上った。他の世代に比べ非正規労働者として働かざるを得ない人が多く、所得も低い。社会保険料を十分払えず高齢になって低年金や無年金で生活が困窮する恐れがあり、厚労省が対応に乗り出した。売り手市場の一九年は約二万人だった。
支援策によると、都道府県が経済団体や人手不足の業界団体と連携し、この世代の採用や処遇改善、社会参加を後押しする。実施計画や目標に照らして都道府県ごとに支援の進み具合を点検する。支援策の周知や企業への働き掛けも行う。
この他に、非正規労働者が正社員になれるよう、就労支援のノウハウを持つ民間業者に教育訓練を委託。ハローワークに専門窓口を設置する。人手不足の運輸業や建設業などの団体と連携し、短期間で資格が取得できるよう支援。経済団体に世代を限定した求人をするよう呼び掛ける。関連する助成金の要件の緩和も通じて採用を促す。
長い期間無職の人や引きこもりの人に向けては「地域若者サポートステーション」の年齢上限を四十歳未満から五十歳ごろまで引き上げる。
<就職氷河期世代> 就職難だった1990年代半ばごろから約10年間は「就職氷河期」と呼ばれ、このころ大学などを卒業し、現在30代半ばから40代半ばごろの人が就職氷河期世代とされる。バブル経済崩壊後の景気後退で企業が新卒採用を抑制したため、卒業後も非正規雇用で働かざるを得ない人が続出。その後、景気回復で正社員となったケースもあるが、非正規の期間が長く、十分な能力を身につける機会がなかったため安定した職業につけていない場合も多い。最初のつまずきから自信を失い、引きこもりなどになった人もいる。