未払い賃金の請求期間、延長へ さかのぼり「原則5年」
朝日新聞デジタル 有料記事 村上晃一 2019年6月14日09時00分
残業代などの未払いがあった場合、社員が会社に請求できるのは「過去2年分」までとする労働基準法の規定について、厚生労働省の有識者検討会が13日、期間の延長を促す見解をまとめた。2020年4月施行の改正民法で、さかのぼってお金を請求できる期間を「原則5年」にすることを踏まえた。
1896年制定の民法は、さかのぼってお金を請求できる期間を原則「10年」とし、賃金の請求に限っては「1年」としていた。それでは働き手に不利だとして、1947年制定の労基法で未払い賃金を請求できる権利が消滅する時効を「2年」とする特例がつくられた。
これに基づき、違法残業が発覚した企業は、実際の違法期間がより長い場合でも、2年分を上限に未払い残業代を払うことが多い。
だが、改正民法でお金を請求できる期間が原則5年とされ、このままでは労基法の特例期間が民法の規定よりも短くなってしまうため、厚労省の検討会で議論していた。
検討会では「労働者を守るための労基法の規定が、民法の規定を下回ることは認められない」といった意見が大勢を占め、見解では「2年のままとする合理性は乏しく、労働者の権利を拡充する方向で見直しが必要」と結論づけた。
何年に延長するかは、労使の代…
□未払い賃金の請求可能期間、現行の2年から5年に延長を検討 厚労省
毎日新聞2019年6月13日 19時14分(最終更新 6月13日 19時14分)
〔写真〕厚生労働省が入る中央合同庁舎第5号館=東京・霞が関で、竹内紀臣撮影
労働者が残業代などの未払い賃金を企業にさかのぼって請求できる期間について、厚生労働省の有識者検討会は13日、現行の2年から延長すべきだとの意見をまとめた。来年4月から、関連する民法の請求期限が原則5年に統一されることを踏まえた。厚労省は夏以降、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で、5年を軸に延長年数などを議論する。
民法は債権を請求できなくなる期限(消滅時効)を、一般的な債権で原則10年としている。例外として、飲食店の未払い代金など日常的に生じる一部債権は1〜3年で、賃金請求権は1年。一方、労働基準法は労働者保護の観点から、特例で「給料日から2年」(退職手当は5年)と定めている。
2017年に成立した改正民法は来年4月に施行され、債権の消滅時効は賃金を含め原則5年に統一される。労基法上の期限が逆に短くなってしまうため、検討会では労働者の権利を拡充するためにも、見直しが必要との意見が大勢を占めた。
厚労省によると、残業代未払いで17年度に全国の労働基準監督署が是正指導した企業は1870社、割増賃金の支払総額は約446億円と過去最多を記録した。過去10年は120億円前後で推移していたが、働き方改革への意識の高まりを背景に急増したとみられる。【矢澤秀範】