「副業の労働時間合算せず」 厚労省検討会が提案 労政審諮問へ (7/26)

「副業の労働時間合算せず」 厚労省検討会が提案 労政審諮問へ

東京新聞 2019年7月26日 朝刊
 
 厚生労働省は二十五日、副業・兼業の労働時間管理に関する専門家会合を開き、「複数職場の労働時間は通算せず、事業所ごとに管理する」ことを盛り込んだ報告書を正式に決定した。この案が実現すると、過労死ラインを超える長時間労働が生じるおそれがあり、今後の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)での議論は紛糾しそうだ。
 
 報告書は、単月百時間未満を上限とする時間外労働の規制について、健康確保措置を講じることを前提に、事業主ごとに管理する選択肢を示した。
 
 これまで労働基準法が定めた「複数職場の労働時間は通算する」との規定(三八条)からの転換となる。
 
 割増賃金についても、事業主ごとに法定労働時間を超えた場合のみに支払うことを盛り込んだ。
 
 検討会は、副業・兼業が普及していない要因について、副業先の労働時間の把握・管理が煩雑なためと指摘。「内容はあくまでも考えられる選択肢の例示にとどめた」(委員の一人)といい、議論は労使らで構成する労政審に委ねた。 (編集委員・久原穏)
 

副業の労働時間通算せず 厚労省検討会 長時間労働を助長
 
しんぶん赤旗 2019年7月27日(土)
 
 労働者の副業や兼業をする際の労働時間について、厚生労働省の検討会は25日、「複数職場の労働時間は通算せず、事業所ごとに管理する」ことを盛り込んだ報告書をまとめました。
 
 長時間労働を防ぐための労働時間の「通算規定」が緩和され、長時間労働を助長する危険な内容です。安倍内閣が骨太方針で決定した「兼業・副業の推進」を受けて、規制を骨抜きにするものです。
 
 労働基準法では、複数の職場で働く場合の労働時間は通算するとしています。労働時間は指針で、使用者が客観的な方法で把握するよう求めています。
 
 報告書案では、「使用者の時間管理がしやすくなる」などとして、労働時間を通算せず、それぞれの企業で上限規制にもとづき労働時間を管理すればよいとしました。
 
 労働時間短縮などの「健康管理措置」を講ずるとしていますが、事後的なもので実効性の乏しいものです。
 
 また、通算する場合でも、本業と副業の企業ごとに1カ月単位など長い期間で上限を決めて、「労働者の自己申告」をもとに時間内に収めればよいとする選択肢も示しました。自主申告を導入することで、通算管理を骨抜きにするものです。
 
 残業代については、(1)労働者の自己申告を前提に所定労働時間だけを通算して支払う(2)通算せずに事業主ごとに支払う―の2案を示しました。いずれも労働時間の把握や歯止め効果が後退し、残業代不払いや長時間労働を生む危険な内容です。
 
 報告書を受けて、労使の代表が参加する労働政策審議会で具体的な議論が行われることになります。
 

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