<ひと ゆめ みらい>侵害された権利の回復図る 世田谷区で外国人労働者の相談窓口設立・岩橋誠さん(29)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201909/CK2019092302000100.html
東京新聞 2019年9月23日
外国人労働者の支援の必要性を訴える岩橋誠さん=国立市で
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貧困や労働問題に取り組むNPO法人「POSSE」(ポッセ、世田谷区)内に四月、外国人労働者を支援する無料の相談窓口「外国人労働サポートセンター」を開設した。「本当に困っている人は声すら上げられない。侵害された権利の回復を目指したい」と思いを語る。
センターは学生や社会人ら約二十人で運営し、外国人労働者への助言、権利の回復、訴訟支援に当たる。「社長に殴られて寮を出てきた」「いきなり解雇された」などの声が寄せられ、岩橋さんは「違法労働がまん延している」と訴える。
愛知県で生まれ、父親の仕事の都合で小学六年から高校生まで米国のケンタッキー州で過ごした。二〇〇八年に帰国した直後、米国のリーマン・ショックに端を発した世界規模の金融危機が起きた。
世界各国が金融市場を守るため、銀行への資本注入などに乗り出す中、日本の国内に目を向けると、仕事を失った多くの派遣労働者が日比谷公園(千代田区)に設けられた「派遣村」で年末年始を過ごしていた。「銀行は国から助けられているのに、派遣労働者に対しては自己責任論が広がっていた。おかしくないかと思った」と振り返る。
進学した京都大でPOSSEを知った。過労死遺族の裁判の支援などをする活動内容に接し「社会の不条理をなくしたい」と決意した。本格的に取り組もうと一七年に上京した。
外国人労働者の支援を思い立ったのは、ある日本語学校に通っていた留学生の女性に出会ったからだ。女性は、母国で受けた説明と異なる労働や家賃負担などを強いられ、勤め先に訴え出ると解雇されて、強制的に帰国させられそうになったという。寮から逃げ出し、さまよっているところをPOSSEとつながった。センター開設後、最初の訴訟支援として女性への協力を続けている。
活動を始めてから、外国人労働者の支援体制が十分でなく、救済されるかは運任せになっているとの懸念を深めた。「待っているだけではだめ」と、駅前でチラシを配布するなど地道な活動にも力を注ぐ。
ただ、外国人労働者の訴訟費用に充てるため、六月から今月上旬まで実施したクラウドファンディングには約三百人が協力してくれた。「関係者でもない方々に、ここまで支援してもらえると思わなかった」と感謝し、手応えも感じている。 (竹谷直子)
「POSSE」は2006年に発足。若者を中心に活動し労働相談、労働法の出張教育などを手掛ける。拠点は仙台市にも。岩橋さんは翻訳や通訳の仕事をしながら支援に取り組む。外国人労働サポートセンターはボランティア募集中。詳細は「POSSE 外国人労働サポートセンター」でインターネット検索。