働き方改革の評価、構成員が病院名公表に難色 「ブラックと言われ大学病院離れ」「患者が敬遠」
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2019年11月7日 水谷悠(m3.com編集部)
厚生労働省は11月6日、「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(座長:遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)に、医師の時間外労働上限の特例医療機関を指定する際に前提となる「医師の働き方改革」を評価する機能についての案を提示した。労務管理体制や医師の労働の実態などを書面、訪問により調査するものだが、その評価結果を公表することについて、構成員から「ブラックと言われ大学病院離れ」「患者が敬遠」などと難色を示し、慎重な対応を求める声が相次いだ。この日の案は評価体制や指定の枠組みについて大まかなイメージにとどまっており、厚労省は今後詳細を示す(資料は、厚労省のホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07686.html)。
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(いずれも2019年11月6日検討会資料)
厚労省案では、評価機能は医療機関が策定した医師労働時間短縮計画に基づいて、取り組みと実績を評価することが主な業務となっているが、どのような組織になるのかは未定。2024年4月以降、B水準(地域医療確保暫定特例水準)と、初期、後期研修医らに適用可能なC水準(集中的技能向上水準)医療機関が評価対象となり、それ以前はB、C水準指定を目指す医療機関が評価対象。評価機能による評価に基づき都道府県がB、C水準を指定することになり、指定の有効期間が3年のため、3年に1度訪問評価を受けることになる。
厚労省はB水準の指定を受ける医療機関が1500施設程度で、C水準もほとんどがB水準と同じ医療機関が指定を受けると想定している。1年に500施設程度の医療機関を、医師あるいは看護師と、社会保険労務士の2人体制で訪問評価するとして、非常勤の評価者50〜100人が必要になると見ている。厚労省医政局医事課の担当者はこれだけの数の社労士らの評価者を確保することについて、「現時点で『ここに任せれば大丈夫』という組織はない」と述べ、今後の検討課題だとした。
評価結果公表に懸念、難色
北里大学医学部教授の堤明純氏は、厚労省案の評価結果を公表することにより「医療のかかり方を見直すきっかけとなることが期待される」との記述について、具体的にどのようなことを想定しているかを質問し、厚労省医政局医事課は「年960時間以上(時間外に)働いている医師がここにはどれくらいいるということが地域の患者に分かり、受診の仕方などの啓発にも寄与するのではないかと考えている」と回答。堤氏は「ポジティブに伝えられて学んでもらえるのはいいが、患者が病院を敬遠してしまう情報に取られると、医療機関には困る。出し方、うまい評価のされ方が大切だ」と述べた。
日本医師会常任理事の城守国斗氏も、「公表によって医師が『あそこは長時間労働させられる』となって(敬遠し)、時短ができにくくなる」と同調。日本医学会副会長で九州大学大学院消化器・総合外科教授の森正樹氏は、「(地域医療構想の)424病院のリストでも、地域の人たちも背景が分からずに見ることになって『病院がなくなってしまうのではないか』などとなった。長時間になっているところには行きたくないという患者の心理で、病院格差を助長する可能性もある」と続き、日医副会長の今村聡氏も「公表の仕方など、全てこれからの日本の医療提供体制に大きく影響する。慎重の上にも慎重を」と注文を付けた。
国立大学附属病院長会議会長で千葉大学医学部附属病院病院長の山本修一氏は、「大学病院は軒並み『あの病院はブラックだ』と名前を挙げられて、大学病院離れを助長する。もちろん努力はするが、公表の時期の問題もある」と指摘。最初に評価結果が出た時点では医療機関と都道府県にのみ通知し、改善後に公表することを提案した。