米NJ州、ウーバーに700億円請求 ギグ経済企業との戦争勃発か
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2019/11/20(水) 15:00配信Forbes JAPAN
米NJ州、ウーバーに700億円請求 ギグ経済企業との戦争勃発か
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米ニュージャージー州の労働・労働力開発局は先日、米配車サービス大手のウーバーに対し約6億4000万ドル(約700億円)の支払いを求めた。同州は、ウーバーが自社の運転手を従業員ではなく独立請負人として誤分類したと主張している。
労働局は、ウーバーが同社の運転手を誤分類したことで財務的な利益を得たとして、未払い分の雇用税を請求している。請求額の内訳は、滞納した税金が5億2300万ドル(約570億円)、2015年以降の利子と罰金が1億1900万ドル(約130億円)だ。
だがウーバー側はこれに反論。広報担当者のアリックス・アンファングはブルームバーグ・ローに対し「この暫定的だが間違った判断に対し、当社は異議を申し立てる」と述べた。
ギグエコノミーの急速な出現とそれに関連した求人市場は、人々の働き方を大幅に変えた。収入アップが必要だがフルタイムの正社員職を見つけることができない人や、自由で独立したライフスタイルを望む人たちは、こうした新しいタイプの仕事を選ぶようになった。ギグ労働者は一見すると従業員のように振る舞っているが、労働の提供先である企業からは独立請負人として扱われている。
大抵の場合、この中心にいるのはテック系企業で、その代表例がウーバーやリフト、ポストメイツ、インスタカート、ドアダッシュ、グラブハブ、タスクラビット、アップワーク、ファイバーなどだ。
労働者を請負人に分類すると、企業にとっては財務面で非常に大きなメリットがある。給与税、社会保険税と医療保険税を合わせたFICA、障害保険、国や州レベルでの失業保険、健康保険を支払ったり、有給休暇を提供したりする必要がない。こうした税は、従業員側も一部を負担する必要がある。
ニュージャージー州の要求は、現時点では失業・障害保険に限られたものだが、ウーバーは州法に基づき、運転手に対する最低賃金と残業代の支払いを命じられる可能性もあり、支払額は膨大な額に上るかもしれない。ニュージャージー州だけでも6億4000万ドルが請求されているのだから、米国の全ての州、そしてギグ労働者に頼る全企業を合わせると、いったいどれほどの金額になるだろう?
ブルームバーグ・インテリジェンスによると、ウーバーの運転手が従業員としての再分類を強いられた場合、運転手のコストは20%以上高騰する可能性がある。株式市場ではニュージャージー州の対応が嫌気され、同社株は3.9%ほど下落。ウーバーの競合企業であるリフトの株価も一時3.2%下落した。
赤字続きのギグ経済企業に存続の危機?
カリフォルニア州議会は9月、ウーバーなどのギグ企業が運転手を従業員として再分類することを強いる可能性がある法案を可決した。また、ニューヨーク州やオレゴン州、ワシントン州などの他の州も同様の法律制定を検討している。こうした州は、巨額の税収を逃していることに気づいたのかもしれない。
これにより深刻な財務的打撃を受けることになるウーバーやリフトなどのテック企業は、カリフォルニア州の新法撤回を求める投票の実現や、例外的措置を求める活動に9000万ドル(約98億円)を投じている。
労働者の分類は一瞥しただけでは無害に思えるかもしれないが、財務面では重要なものだ。ウーバーのような企業が払うべき税金を支払わなければ、その負担を負うことになるのは私たち納税者だ。
ギグ経済企業は規制が緩いトランプ政権下で、運転手などのサービス提供者と顧客の間を単に仲介する罪のないプラットフォーム提供者として振る舞っている。規制当局はこれまで、この戦略に対して本腰を入れて対抗してこなかった。
労働者を従業員として再分類することは、ウーバーなどの企業の生存を脅かすものだ。ウーバーを含め、この分野で事業を展開する多くのテック企業はいまだに赤字続きであり、黒字転換に必死だ。請負人を従業員にすることにより発生する給与と福利厚生の追加コストにより、こうした企業が生き残る方法に疑念が生じる。
ウーバーなどの企業は、ひそかに税金の抜け穴を使い、請負人を利用してビジネスを構築してきた。他の州がニュージャージーに続けば、こうした企業は深刻な危機にさらされるかもしれない。最悪のケースでは企業が破産し、請負人は仕事を失ってしまうだろう。企業の経営を破綻させることなく、請負人と納税の両面で公平性を確保するような絶妙な妥協策は、きっと存在する。
Jack Kelly