ヤマトに続きエイベックスも 未払い残業代支給の背景は

朝日DIGITAL 2017年5月2日

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 宅配便最大手ヤマトホールディングス(HD)や関西電力に続き、音楽大手エイベックス・グループ・HDも違法残業の実態を全社的に調べ、未払い残業代の支給を決めた。いずれも労働基準監督署から是正勧告を受けたのを機に大規模な社内調査に乗り出しており、こうした動きがさらに広がる可能性もある。

 ヤマトHDは、傘下の事業会社で「宅急便」を手がけるヤマト運輸横浜市の支店が同市内の労基署から労働基準法違反で是正勧告を受けたのを機に、最大で過去2年分について社員の労働実態を調査。その結果、少なくとも4万7千人に計190億円を払うと先月発表した。

 関西電力は昨年春に高浜原発1、2号機(福井県)の運転延長審査手続きを担当していた社員が自殺し、労災認定されて以降、労基署からの是正勧告や指導が相次いだ。これを受け、全社員を対象に過去2年分について社内調査を実施。先月、約1万2900人に計17億円の残業代を払った。

 エイベックスHDの対応も、こうした動きの延長線上にある。未払い分は2017年3月期決算に計上する方針だ。パソコンのオン・オフの記録をもとに労働時間を把握してきた管理方法を6月から改め、従業員自らがパソコンやスマートフォンで勤務時間を打ち込んで報告する仕組みを導入することも明らかにした。

 社内には「ヤマトや関電は2年分を調べているのに、昨年6月分からしか調べないのは短すぎるのではないか」と不満の声も出ているが、同社幹部は「労基署から指摘を受けた期間を調査しており、方針を変えるつもりはない」と話している。

 松浦勝人社長が昨年末、労基署の是正勧告を受けてブログに「時代に合わない労基法なんて早く改正してほしい」などと書き込んだことについて同社幹部は、「労基署への反論と受け取られたかもしれないが、愚痴のようなもので、会社としては勧告を真摯(しんし)に受け止めて対応した」と釈明した。経営陣を含めた社内処分は考えていないという。

 元労働基準監督官社会保険労務士の原論(さとし)さんは、企業の対応の背景に「長時間労働や残業代の未払いに対する社会の関心の高まりがある」とみる。「労基署から是正勧告を受けた企業は、そもそも社内の不満をうまく吸収できていないことが多い。ネット社会の今は社内の不満が社外に拡散しやすく、放置すると企業の評判が落ちるリスクもあり、全社的な対応を迫られているのではないか」と指摘する。(土屋亮、贄川俊)

 

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