かんぽの宿で残業代未払い 労基署が是正勧告
https://www.asahi.com/articles/ASMDS4FHHMDSPLFA003.html
朝日新聞デジタル 生田大介、榊原謙 2019年12月24日18時04分
〔写真・図版〕日本郵政が運営する「かんぽの宿 奈良」(同社提供)
日本郵政が運営する宿泊施設「かんぽの宿 奈良」(奈良市)で、従業員に対する残業代の未払いがあることがわかった。朝日新聞の取材に、奈良労働基準監督署から10、11月に是正勧告を受けたことを同社が認めた。未払いの人数や額などを精査中で、確認できしだい、支払うとしている。
同社によると、未払いがあったのは料理人として勤める従業員。未払い賃金の請求時効の2年前までさかのぼり、10人以上を調べている。残業代の未払いに加え、連続6時間以上働く場合に義務づけられた45分の休憩を与えなかったケースもあり、その時間分の賃金の支払いも労基署から求められたという。
取材に応じた元料理人の男性によると、職場は人手不足で長時間労働が常態化していたが、残業を労働基準法などが定める上限の原則年360時間に抑えるため、上司から月30時間を超える分を申請しないよう強く求められたという。午前9時からの勤務シフトでも午前6時から働いて準備するように求められたのに、毎回3時間分は申請できなかった。時間外の労働は毎月70〜80時間で、不払いは過去2年間だけでも総額約100万円になるという。
日本郵政の担当者は「上司が勤務時間を十分に管理できていなかったのが原因」と説明する一方、労働時間の過少申告を強要していたことは否定。詳しい事実関係は「確認中」とした。
「かんぽの宿」は、もともと簡易生命保険の加入者の福利厚生のため、全国に建てられた施設。2007年の郵政民営化時点では約70あったが、採算悪化などで閉鎖が相次ぎ、現在は約40に減っている。日本郵政は、ほかの施設で同様の不払いがなかったかどうかは「今のところ、調べる予定はない」としている。(生田大介、榊原謙)