国公労連「公務労働者の人権を守り、国民本位の行財政・司法の実現のため 実効あるパワハラ対策を(談話)」(1/15)

すべての公務員労働者が安心して働ける職場の実現を
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私たちの主張:私たちの主張】2020-01-15

公務労働者の人権を守り、国民本位の行財政・司法の実現のため

実効あるパワハラ対策を(談話)

2020年1月15日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長  九後 健治

 人事院が昨年3月に設置した「公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会」は、1月14日に報告をとりまとめ人事院へ提出した。
報告では、パワー・ハラスメント(以下、パワハラ)に対する基本的姿勢について、「パワー・ハラスメントは人権に関わるものとして、職員の利益保護の観点から防止されなければならない」とし、「公務全体の方針としてパワー・ハラスメントを行ってはならないことを規定」すべきとしており、職場の実態や感情をふまえれば大枠では歓迎すべきといえる。

 報告ではパワハラの概念を示しているが、「職務に関する優越的な関係」を背景として行われるものとして「職員が担当する行政サービスの利用者等による言動」「他府省庁の職員による言動」が盛り込まれたことは国公労連の主張を一定反映したものといえる。また、「個別の職場の風土によって許容されるものではなく、〈中略〉職員に精神的又は身体的苦痛を与える言動は、当該職員の能力発揮に悪影響を及ぼすのみならず、職員の勤務環境を害する言動でもあり、パワー・ハラスメントに該当する」として、行政サービス提供の観点からもパワハラが問題であることを明確にしている。また、パワハラの禁止について「高い業績を残したとしても、その過程において部下をパワー・ハラスメントにより追い詰めている者については、高く評価されてはならない」と人事評価制度の問題点にも踏み込んだ記述がなされているとともに、「パワー・ハラスメントが生じにくい勤務体制や職場環境を整備する」必要性にも言及したことは至極当然である。

 他方で、それぞれの問題に十分踏み込んでいない部分があり、それらについて今後具体的な対策が求められる。たとえば、「業務に関する優越的な関係」の例として、同僚又は部下の言動が「(行為者の)協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難な状況下でなされるもの」「集団による行為」があげられているが、業務に関係なく同僚や部下から罵倒されたり、一対一の関係で行われる行為については含まれないこととなる。また、「業務上必要かつ相当な範囲を超える言動」は当該言動を受けた職員の問題行動の有無や内容・程度などをふまえて「総合的に判断されるべき」、としているが、誰が「総合的に判断」するのかによっては、事実のもみ消しなどが行われる可能性も少なくない。
 行政サービス利用者等からの言動も盛り込まれたものの「職員の所属する府省庁の業務の範囲や限度を明らかに超えるもの」と限定的になっているが、そもそも行政サービス利用者は法律や制度、手続内容などへの不満から行為に及ぶのであり、こうした定義は現場実態をふまえたものとはとうてい言えない。また、他府省庁に所属する職員からのパワハラ行為への対処では行為者が所属する他府省庁の長と連携した対応を求めているが、各省庁が持っている権限に差がある中で、それぞれの省庁が対等の立場でパワハラの防止や被害者の救済ができるのかという点では疑問を抱かざるを得ない。

 報告では「国民に質の高い行政サービスを提供するためにも、パワー・ハラスメントを防止する必要性が認められる」としているが、公務職場におけるパワハラの背景には、検討会の報告が「パワー・ハラスメント発生の温床」と指摘している「業務過多や人員不足」をはじめ、短期の評価を処遇に直接反映する人事評価制度、森友・加計疑惑などによって問題が明らかになった内閣人事局のあり方や公文書の隠蔽・改ざん・廃棄などに対する国民の行政不信などがあるのであり、そうした問題の解消こそが求められる。
 国公労連は、行政体制確立をはじめとして国民本位の行財政・司法の確立をめざし引き続き奮闘するとともに、誰もが安心して働ける公務職場の実現のため、指針策定に向け今回の報告や職場実態にもとづく真摯な検討を行うよう人事院に求めるものである。

以 上


【関連情報】
公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会報告

https://www.jinji.go.jp/kenkyukai/pawahara-kentoukai/pawahara_houkokusyo.pdf

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