政府オリパラ推進本部、「残業なし」の非常勤職員深夜居残り常態化 午前4時帰宅も 事務局は超勤命令否定
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2020/01/29(水) 19:15配信 産経新聞
政府オリパラ推進本部、「残業なし」の非常勤職員深夜居残り常態化 午前4時帰宅も 事務局は超勤命令否定
非常勤職員が使用したタクシーチケットの複写=29日、東京都千代田区(川口良介撮影)
政府の東京五輪・パラリンピック推進本部事務局で、民間大手から派遣された複数の非常勤職員が勤務時間終了後に未明まで庁舎に残り、作業を続ける勤務形態が常態化していることが29日、分かった。非常勤職員は超過勤務がない採用条件だが、退庁時間が午前4時を過ぎて居残り時間が月約48時間となり、働き方改革で定めた残業の上限である「原則月45時間」を超えるケースもあった。事務局側は自発的な居残りで超過勤務に当たらないと主張するが、実質的に残業を強いる運用を続けている可能性がある。
事務局は取材に対し、「非常勤職員が勤務時間後に自発的、自主的に自学や研究、私物整理をしているケースがある」と説明。居残り時間の給料については「国からは支払っていない。派遣元から受け取っているかは承知しておらず、調べる立場にもない」としている。
関係者らによると、事務局は平成27年度以降、令和元年8月時点で鉄道・航空事業者や大手電機メーカーなど民間大手から年間2〜9人を新規に受け入れている。採用時の条件では、午後5時15分までの5時間45分、週5日勤務などとしており、超過勤務はないと定めている。
だが、情報公開請求で開示された深夜帰宅用タクシーの乗車伝票を集計すると、事務局では平成30年度、非常勤職員が深夜帰宅タクシーを月1〜20回、計89回使用。乗車時間が記載された80回のうち午前4時台が5回あり、同3時台13回、同2時台20回、同1時台36回、同0時台6回だった。
同年度の非常勤職員数は12〜14人で推移していた。伝票に記入された行き先や筆跡を確認すると、使用状況には偏りがあった。14人がそれぞれ1〜31回使用し、うち3人は10回以上だったとみられる。
31回の非常勤職員は同年度、午前4時台に4回使用。乗車時間が最も遅かったのは、30年4月の午前4時40分だった。乗車時間などから、この非常勤職員の終業定時以降の居残り時間は、乗車時間に記載があったタクシー使用日だけで年間270時間超、最多の月間は48時間超に上った可能性がある。
■非常勤の勤務、発足当初からずさん管理 政府オリパラ事務局
採用条件に超過勤務がない非常勤職員が未明まで庁舎に残り、タクシーで帰宅するという勤務実態が政府の東京五輪・パラリンピック推進本部事務局で明らかになった。深夜帰宅タクシーの使用は平成27年の事務局発足直後から始まっており、使用回数は年々増加。しかし、居残りを解消するための措置を取った様子はうかがえない。政府が推し進める働き方改革に逆行するともいえる勤務管理体制が浮かび上がった。
政府のオリパラ推進本部は大会特別措置法に基づき内閣官房の推進室を格上げし、27年6月25日に設置された。東京都千代田区の内閣府庁舎にある事務局はテロ防止や交通網整備、感染症対策など大会運営に関する関係省庁の調整事務を担当している。
情報公開請求で開示された深夜帰宅タクシーの乗車伝票では、非常勤職員の1人が設置当日に使用しているのが確認された。年間の使用回数は年々増加。27年度が30回で、28年度75回、29年度78回、30年度89回で、令和元(平成31)年度は情報公開請求前の4〜7月で41回に上った。
事務局は職員の深夜帰宅タクシー使用について、上司から超過勤務を命じられて業務が深夜に及び、終電時間を過ぎた場合、午前0時半以降に認めている。
ただ、事務局は「非常勤職員らは超過勤務命令を出さない条件で採用しており、非常勤に超過勤務は発生しない」と説明。非常勤職員に深夜帰宅タクシーの利用を認めた理由については、健康管理のほか、「業務に関連する内容について補助的に参画しているため」とし、具体的な作業内容や超過勤務との違いは明らかにしなかった。
一方で、事務局は非常勤職員の居残り時間を記した帳簿類は存在しないとしている。非常勤職員の勤務時間報告書は、出勤日に丸印を付けて欠勤時間を記入する書式で、「契約勤務時間を超える報告はしないでください」などと注意書きがされている。
政府は長時間労働の是正に向け働き方改革を推進。30年4月に残業の上限を「原則月45時間かつ年360時間」などと規制する働き方改革関連法案を閣議決定し、同法は31年4月から本格的に施行された。だが、非常勤職員の中には、閣議決定後の30年9月、居残り時間がタクシーを使用した5日間で計48時間超、31年4月に5日間で計45時間超に上ったケースも確認された。
事務局の管理職らが非常勤職員の勤務実態を適切に把握していなかった可能性が浮上している。事務局に社員を派遣している民間企業のうち、1社の関係者が取材に応じ「社員の勤務状況について、しっかりとした管理監督を強く求めたい」と話した。