解雇の金銭解決、労組が警戒感 「すべてカネで決着」

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2015年10月30日03時13分

写真・図版: 解雇の金銭解決制度とは(省略)
 
 政府が導入を目指す解雇の「金銭解決制度」について、厚生労働省の検討会が29日、議論を始めた。裁判で不当解雇とされた場合、会社が働き手にお金を払えば退職させられる制度で、政府や経済界の宿願。だが労働組合側は強い警戒感を示す。

 裁判で不当解雇と認められても、現状では企業が復帰を拒み、お金を払って解決せざるを得ないケースは多い。金銭解決をルール化すれば紛争も解決しやすく、労働者にも企業にもプラス。これが政府や経済界の主張だ。

 29日の検討会で、経済同友会の幹部は「グローバル化や少子高齢化で日本のシステムが立ちゆかなくなってきた。国際的な比較で議論したい」と述べた。

 労組側は金銭解決制度の検討より前に、いまある労働審判などの充実を改めて求めた。連合東京の関係者は「労働法を知らない経営者が多い。ルールを無視して解雇する経営者をいかに規制するか考えるべきだ」と述べた。金銭解決制度ができれば社員としての地位確認を求めることが難しくなるとの警戒感からだ。

 ログイン前の続き政府が制度導入をめざすのは今回、2002年や05年に続いて3度目。過去は労組などの反発で見送ってきた。日本IBMによる解雇は無効として訴訟をしている田中純さん(45)は「金銭解決制度は、不当解雇にお墨付きを与えるようなものだ」と批判する。

 今回も詰めるべき課題は山積みだ。金銭解決を申し立てる権利を労働者と企業のどちらに認めるかがそのひとつ。政府の規制改革会議は「企業がすべてカネで決着をつける事態になる恐れがある」と労働者側のみにすべきだとの意見だ。

 解決金の水準も難しい。企業規模の差などによって利害がわかれ、安い解決金しか払わないケースの多い中小企業はコスト増への懸念もある。

 解雇をめぐる紛争を解決する手段は労働局のあっせんや労働審判制度もある。ただ厚労省によると、実際は96〜97%が最終的に金銭解決になっているという。(北川慧一
 

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