世界で5億人活用されず ILOが報告書
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55052030Q0A130C2FF2000/
日経新聞 2020/1/30 19:15
国際労働機関(ILO)は、世界で十分に活用されていない労働人口が2019年時点で約5億人いるとの報告書をまとめた。20年の世界全体の失業率は5.4%と、これまで続いてきた改善傾向が止まるとの見方も示した。米中貿易戦争などで、特に製造業への影響が大きいとしている。
就職イベントに参加するため列を作る求職者(2019年4月、ニューヨーク)=ロイター
画像の拡大
就職イベントに参加するため列を作る求職者(2019年4月、ニューヨーク)=ロイター
ILOが発表した最新の報告書「世界の雇用及び社会の見通し」で明らかにした。
活用されていない労働人口約5億人の内訳は、失業者数が1億8800万人、より長く働くことを希望している就業者数が1億6500万人、労働意欲はあるが就労機会に恵まれていない人数が1億1900万人程度存在するという。
そのほか、15〜24歳の若者の約5人に1人が仕事も通学も求職もしない「ニート」であるとも指摘した。ニートは世界全体で2億6700万人いるとし、男性の14%、女性の31%から構成されると分析している。
報告書では性別や地域による就労上の不平等が大きいことも強調した。男性の就労率が74%の一方で、女性は47%と低い水準にあることを示した。地域間での就労率の比較では「北アフリカ」「アラビア半島」の地域に居住する女性の約4割が十分な就労機会に恵まれていないとし、他地域の女性に比べて厳しい就労環境に置かれているとした。
20年の失業者数は約1億9千万人と、19年から約250万人増えると予測する。
低所得国での労働環境の改善が進んでいないことも問題視している。1日当たりの収入が3.2ドル(約350円)を下回る「ワーキングプア」は19年時点で6億3千万人を超え、世界の就労人口の約2割に達したという。この状況により国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成はより困難になったと警鐘を鳴らした。