◇働き方は自ら変えられる
サービス残業、ワーキングプア、過労死・過労自殺、非正規雇用 ―。労働者を取りまく環境は悪化の一途をたどる。札幌市東区の消 防車などの特殊車両を製造・整備する会社の従業員が、先月21日、 初の24時間ストライキを決行した。20〜40代の男性24人で平均年齢29歳。4カ月前に労働組合を結成したばかりだった。25歳の私と同年代の若者が「おれたちは奴隷じゃない」と未払い賃金の支払いなどを求め立ち上がった姿をみて、働き方に悩みや疑問を抱えた時、自らの手で守るすべがあることを、働く若者はもっと知るべきだと痛感した。
厚生労働省や総務省の統計によると、北海道は、非正規雇用者が雇用者に占める割合が10年で37.4%(全国平均34.3%)と高く、11年の固定給与額は27万9000円(同32万3000円)で47都道府県中31位。全国平均以下の厳しい労働環境にある。
労組メンバーによると、この特殊車両製造・整備会社では、残業代は定額しか出ない。ある20代前半の組合員は月200時間近い残業をこなしても残業代は6万円ほど。手取り給与は約20万円で、時給換算すると道の最低賃金(時給719円)ぎりぎりの金額だ。繁忙期には35時間連続勤務もあったという。
◇地域労組が支援 有給取得も増加
労組結成のきっかけは若手社員の行動だった。今年3月、インターネットで残業代の仕組みを調べているうちに、中小企業の労働者を支援する札幌地域労組を知り、駆け込んだ。同労組のアドバイスを受けながら、労働3法や労使交渉のルールを学び、5月に同労組の支部を結成。団体交渉で会社側が管理してきた2年分のタイムカード開示に成功した。有給休暇の取得率は約10%から約50%に伸びた。残業代も会社側が一部未払いを認めた。労組支部長の橋本良太さん(33)は「苦しんでいる20〜30代はたくさんいるはず。 若い世代に権利の守り方を示すためにも頑張りたい」と語る。
社内に労組がなくても組合に加盟する若者がいる。札幌ローカルユニオン「結」は業種、雇用形態に関係なく、誰でも加盟できる。札幌市内の女性(32)は不動産会社に勤めていた際、持病が悪化し有給休暇を取ったところ解雇された。結に加盟し、解雇を取り消す仮処分を申請し認められた。現在は給料をもらいながら解雇無効を求める裁判の準備を進める。05年に20人で始まった結のメンバーは現在、約500人に増えた。