事故から2年以上過ぎたのに、この程度の体制しか整えていなかったのか。あまりのお粗末さに、地元住民はもちろん、国民の多くが、東京電力に事故処理を任せておいていいのかという懸念を抱いたはずだ。
東電福島第1原発で18日夜、大規模な停電が発生し、使用済み核燃料プールの冷却装置など9設備が停止した。すべてが復旧するまで29時間以上もかかった。ネズミが仮設の配電盤に接触し、ショートしたことが原因の可能性があるという。
東電は「事故ではなく事象」と説明するが、使用済み核燃料プールの状態については世界の関心も高く、住民も心配に思っている。再発防止策の徹底を急いでもらいたい。
停止したプールには核燃料が約9000体入っていた。プールの冷却機能が停止すると燃料温度が上昇、冷却水も蒸発し、最悪の場合は溶融する恐れがある。中でも4号機の原子炉建屋は水素爆発で大きく壊れており、燃料プールはむき出しの不安定な状態のままになっている。
ショートした配電盤は、福島第1原発事故の直後に運び込まれ、屋外のトラックの荷台に置かれていた。プールの温度上昇には時間の余裕があるため、炉心への注水設備には備えられているバックアップシステムは準備されておらず、今月中に対策をとる予定だったという。
多重で多様な備えが大切なことが福島第1原発事故の教訓であり、バックアップを準備しなかった判断は甘すぎる。事故対応のドタバタの中で、福島第1原発には仮設状態のままの配管やタンクなどがいまだに数多くある。こうした周辺設備の改善もより速やかに進めなければならない。今回の停電では、プールの水温は規定以下に抑えられたが、周辺設備だからといって対策を緩めると、思わぬ重大事故を招きかねない。
原子力規制委員会は検討会を設置して、同原発の廃炉計画を審議している。規制委と東電は、今回の停電を教訓に、安全対策に漏れがないかどうかを再検討すべきだ。
東電は福島第1原発の廃炉に向け近く、海外の専門家から技術開発などの助言を受ける「国際アドバイザリーチーム」を設立する。経験と技術を持った第三者が廃炉計画をチェックし、問題点を分かりやすく公表することには大きな意義がある。
最後に、停電の広報遅れを指摘しておきたい。東電は発生後間もなく規制委に連絡したが、福島県へは約1時間後、報道機関へは3時間以上も遅れた。東電は住民に顔を向けているのか、それとも規制当局に顔を向けているのか。住民の東電不信は一層強まったことだろう。情報公開を最優先に対応してほしい。