http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013081302000166.html
東京新聞 2013年8月13日
今年四〜六月期のGDP成長率が市場予測を大きく下回る水準にとどまったことは、消費税増税の環境がいまだ整っていないとみるべきだ。デフレ脱却を最優先にした経済運営が望まれる。
消費税を来年四月に8%に、さらに再来年十月には10%に引き上げても日本経済は大丈夫なのか。一九九七年に3%から5%に引き上げて景気が失速、「十五年デフレ」のきっかけとなった消費税ショックの再現になってしまうのではないか。安倍晋三首相が増税の可否を今秋判断するうえで重要な経済指標の四〜六月期の国内総生産(GDP)速報が発表された。
物価変動を除いた実質GDPは前期比0・6%増、年率2・6%増と三・四半期連続のプラス成長だったが、市場予測(年率3・6%)を大きく下回った。個人消費は好調だったものの、住宅投資や設備投資はマイナスのままだ。
消費税増税の前提となるのは、増税法の景気条項にあるように「経済状況の好転」である。その意味するところは、設備投資が伸び、生産の増加から失業率や所得の改善に波及して自律的な景気回復軌道に乗ることだ。個人消費が良かったのは株高による資産効果で高額品が売れたからであり、国民の幅広くに消費の改善がみられたわけではない。
今回のGDP速報からは、とてもデフレ脱却とはいえず、増税を急げば景気の腰折れにつながる恐れは強い。財務省や増税断行派は、消費税増税を先送りすれば政府が財政再建に消極的とみられ、財政への不信から国債が暴落(長期金利は暴騰)すると主張するが本当だろうか。「不況時に増税して成功した前例はない」といわれるように、デフレ下で増税しても税収増は見込めないのである。増税することが自己目的化した財務省の論理では、経済再生はかなわず財政再建も実現しない。
財政赤字に二種類あるのは経済学の基本である。すなわち不況時に税収減や失業手当の増加などによって生まれる「循環的財政赤字」と、景気が良くなってもなくならない「構造的財政赤字」だ。ここ数年の財政赤字の多くは前者、つまりサブプライム危機など世界不況によるものである。
経済を回復させれば税収が戻り、財政赤字も縮小する。だからデフレ脱却を優先して、まず循環的財政赤字を解消する。増税などの構造対策に着手するのは、その後である。