東京新聞 2013年12月28日
沖縄県の仲井真弘多知事は名護市辺野古沿岸部の埋め立てを承認したが、米軍普天間飛行場「県内移設」の困難さに変わりはない。国外・県外移設を求める沖縄の民意を置き去りにしてはならない。
何とも分かりにくい説明だ。普天間飛行場の代替施設を建設するため、政府が提出していた海面の埋め立て申請を、仲井真知事が承認した。一方で知事は、知事選で公約し、その後も繰り返してきた「県外移設」を求める考えに変わりはないという。
政府の要求に応えながらも、県民との約束をたがえたわけではないという「苦渋の選択」ということか。あくまでも県外移設を求めるというのなら、申請を認めない選択肢はなかったのだろうか。
埋め立て申請を承認したとはいえ、知事自身が記者会見で述べたように、代替施設の建設工事が順調に進むわけではない。地元の名護市をはじめ、県民の県内移設に対する反対は依然、強い。
速やかに着工しても、完成まで十年近くかかるという。その間、住宅密集地に隣接し、安全性に懸念が残る新型輸送機オスプレイが離着陸する普天間飛行場の危険性を放置していいわけがない。
知事は、普天間飛行場の五年以内の運用停止と早期返還を求め、政府側は防衛省内に作業チームを設置して検討するというが、現段階で確約があるわけではない。
問題の根本は、沖縄県に在日米軍基地の74%が集中し、県民が過重な基地負担を強いられていることにある。県内で米軍基地をたらい回ししても、県民の抜本的な負担軽減にはつながらない。
安倍晋三首相は、沖縄の負担軽減へ「できることは、すべてやらなければならない」と述べた。
その覚悟があるのなら、普天間飛行場に駐留する米海兵隊機能は国外・県外への移設を真剣に検討した方が早道ではないのか。
沖縄県側が要請していた日米地位協定の改定では、日本政府は返還前の米軍基地への環境調査ができるよう補足の協定締結に向けて米側との協議に入るという。
一歩前進だが、問題の核心である罪を犯した米軍人らの起訴前の身柄引き渡しには手付かずだ。
年間三千億円台の沖縄振興費という「アメ」と、普天間固定化という「ムチ」をちらつかせて、県内移設受け入れを迫るようなやり方が許されようはずがない。政府も県もいま一度向き合うべきは、沖縄の民意である。