東京新聞 2014年12月23日
貧困や格差、非正規雇用の広がりで、年金の少ない高齢者だけでなく、若い世代にも安定した住まいを持てない人が増えている。雇用や福祉の支援に加え、住まいを保障する政策が求められる。
貧困のために安定した住まいを持てない「住まいの貧困」の問題で、ホームレスやネットカフェ難民は一つの断面でしかない。
敷金礼金がいらず、ビルの一室を仕切って窓もない「脱法ハウス」や、劣悪な環境に高齢者を詰め込む「貧困ビジネス」も次々に明るみに出た。
貧困や格差の広がりは、問題を身近な人にまで及ばせる。
年金の少ない単身高齢者は家主が建て替えをする際の立ち退きや、家賃上昇などで、住まいを失い、入居拒否にもあいやすい。民間賃貸会社のアンケート調査によると、単身高齢者の入居を断っていると答えた割合が少なくない。
保証人がいないことも理由にされやすく、困窮者を支援するNPO「もやい」(東京)は、年間延べ三千件の生活相談を受けており、住まいの問題も多い。相談者には、高齢者だけでなく母子家庭や若い人も目立っている。
働く人の三割が年収二百万円以下という若い世代は、自分で住まいを借りたり、持つことが難しくなっている。
「ビッグイシュー基金」が首都圏と関西圏に暮らす年収二百万円以下の未婚の二十〜三十代、約千七百人から回答を得たインターネット調査によると、6・6%がホームレス状態を経験したことがあると答えた。生活が厳しいと答えた人も半数を超えた。親と同居しているために窮状が隠れている。
住まいは暮らしの基盤になる。日本は雇用と福祉の施策が中心だが、生活保護を受けるほどに困窮しなければ住居費の援助を受けられないのでなく、まず住宅を保障する政策が必要ではないか。
住まいがあれば仕事を探して生活を立て直し、貧困から抜け出すこともできる。
日本の公的賃貸住宅は4%。政策の整った欧州で、ドイツは社会賃貸住宅が二割、家賃補助制度も二割が受けている。
注目したいのは空き家だ。全国で13・5%に上る。所有者の理解を得て活用を進めてほしい。
NPOや自治体に家主が協力し、空き家を困窮者のシェルターなどに活用するケースが出ている。貧困を拡大しないためにも、こうした支援を積極的に進めてほしい。