朝日デジタル 2014年12月26日
居酒屋やファストフード店、コンビニ、学習塾の講師など、学生時代にアルバイトをした経験は多くの人にあるだろう。働く理由は様々でも、貴重な体験になったに違いない。
そのアルバイトで、学生生活と両立できない働き方が増えていると指摘されている。「ブラックバイト」と呼ばれている。
この問題を提起した大内裕和・中京大学教授は、ブラックバイトを「学生であることを尊重しないアルバイト。低賃金なのに、正規雇用労働者並みの義務やノルマを課されたり、学生生活に支障をきたしたりするほどの重労働を強いられること」と定義している。ゼミ合宿やコンパを計画しても学生が集まらないことが増え、事情を聴くと、「アルバイトを休めない」「希望通りに勤務の調整ができない」という学生が多いことがわかってきたという。
若者を使い捨てにする「ブラック企業」問題に取り組む団体が調査したところ、アルバイト経験のある約2500人のうち、3割弱が週20時間以上働いていると回答した。
飲食・サービス業では、アルバイトの比重が増し、働き手をランク付けして、リーダーや時間帯の責任者などを任せているところもある。学生生活に支障をきたさないようにする節度を企業側には求めたい。
学生からは「残業代が支払われない」「休憩時間がない」といった相談があるという。アルバイトだから労働法を無視していいわけではない。法令順守は当然のことだ。
学生に最低限必要な労働法の知識を教えることも大切だ。アルバイトの時給にも最低賃金が適用されるし、働いた時間に応じて賃金を受け取る権利がある。「おかしいな」と思ったら、相談できる態勢整備が必要だ。行政機関のほか、大学に窓口を設けるのも一案だろう。
「遊ぶためのお金だろう。辞めればいい」。中高年世代には、こんな疑問があるかも知れない。しかし、学生をとりまく経済状況も変わっている。
大学の授業料が高騰する一方、労働者の賃金は減少し続けてきた。奨学金制度も心もとない。日本の場合、有利子の貸与型が中心だからだ。
学業にもっと時間を割きたいのに、生活費のためにアルバイトをせざるをえない。無理な働き方をさせられていても、簡単には辞められない――。そんな悪循環が起きているとしたら、放置はできない。
学生の就労もブラック化させてはならない。