北海道新聞 社説 コンビニ経営 拡大から持続へ転換を (05.04)

 社説 コンビニ経営 拡大から持続へ転換を

 
北海道新聞 2019/05/04 05:01
 
 踏み込み不足と言うほかない。
 加盟店が抱える人手不足などの問題を改善するため、コンビニエンスストア全国大手3社がまとめた行動計画のことだ。
 24時間営業の見直しを視野に営業時間短縮の実験に取り組んだり、時短営業の店舗を増やしたりする。チェーン全体の売り上げ増や効率化を図る大量出店も控え、既存店への投資を増やすという。
 だが、本部が安定的にもうかるフランチャイズ(FC)契約の見直しには手を付けないままだ。
 大手の契約では本部と加盟店が粗利益を分け合い、人件費などの店舗運営費用は店側が負担する。
 人手不足による人件費上昇が加盟店の経営を圧迫しており、利益の分配方法や負担のあり方を見直すことは避けられないはずだ。
 これでは加盟店の不満をそらすための小手先の対応とみられても仕方ない。本部と加盟店が共存共栄でき、持続可能な事業モデルを早急に構築すべきだ。
 24時間営業を巡っては、セブン―イレブン・ジャパンの加盟店が2月に時短営業に踏み切り、本部と対立。社長交代につながった。
 経済産業省が加盟店主を対象に実施した調査では、6割が「従業員の不足」を訴え、加盟に満足していないとの回答も4割に上る。
 出店が過熱し、自社の店同士で客や店員を奪い合う事例もある。
 セブンの永松文彦社長は先月、「最終判断は店主に委ねる」と時短営業を拒絶しない考えを示した。公正取引委員会が24時間営業の不当な強要に独占禁止法適用を検討していることも意識してだろう。
 ただ各社とも24時間営業の原則を変えていない。弁当の生産や配送、陳列など商品供給体制が24時間営業を前提にしているためだ。
 時短営業の店が増えれば、物流コストの増加などを誰が負担するのか。抜本改革が避けられまい。
 ファミリーマートの時短実験では、対象店を特定の地域にまとめ、商品供給体制を含む見直しにまで踏み込む。注目に値しよう。
 国の姿勢も気がかりだ。行動計画は世耕弘成経産相が地場大手セコマを含む8社に提出を求めた。経産省は計画の進展状況を点検する有識者会議を設けるという。
 改革は各社が主体的に取り組むべきで、計画を作らせチェックまでするのはいかがなものか。
 国の役割は社会状況の変化を踏まえて法律や制度を見直し、民間が自ら解決できる環境を整えることだ。政府の介入が民間の活力をそぐ過ちを犯してはならない。
 
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