教員に1年単位の変形労働時間制を導入する法の成立に抗議し、長時間労働の是正への真に実効ある対策を求める声明
1 公立学校の教員に1年単位の変形労働時間制を適用できるようにする「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」の「改正」案(給特法「改正」案)が本日成立した。
給特法「改正」案は、教員の業務の性質からみても、あらかじめ業務の繁閑を見込むことができず、1年単位の変形労働時間制になじまないにもかかわらず、これを教員に導入するという本質的な欠陥があるものであり、いっそうの長時間労働を教員に強いることにもなりかねない。のみならず、労使協定を結ぶことなく、条例等により学校に変形労働時間制を導入するものであって、一年単位の変形労働時間制の導入に労使協定を手続要件とした労働基準法をないがしろにするものである。
2 国会の審議においても、現場の教員、労働事件に取り組む弁護士、過労死遺族をはじめ多くの参考人から反対の声が上がった。また、国会審議の中で、そもそも時間外勤務を「自主的勤務」として残業代を支払っていない現状の給特法体制に問題があること、1年単位の変形労働時間制を条例で導入しても、学校現場の教員の声を無視して制度の運用ができないこと、恒常的に時間外労働が発生している事業所には本制度の適用の前提を欠くとの厚労省通達からすると、時間外勤務が発生している学校では本制度を導入すべき前提を欠くこと等、野党議員から重要な指摘がなされた。にもかかわらず、政府与党は、教育現場の声を十分に聴かず、本制度を導入する必要性やこれら指摘された重要な問題点について十分な審議をしないまま、法案を採決し成立させてしまった。
3 自由法曹団は給特法「改正」案の成立に断固抗議し、各地方自治体に対して1年単位の変形労働時間制導入のための条例の制定を行わないよう求めるとともに、教員の増員や持ち時間数の削減、十分な予算措置を講じる等の真に教員の長時間労働の是正となる実効ある対策を求めるものである。
2019年12月4日
自由法曹団
団長 吉田 健一