水上賢治さん「営業成績トップがシュレッダー係へ。ブラックな会社とひとり闘う社員を追った『アリ地獄天国』公開へ」 (12/27)

営業成績トップがシュレッダー係へ。ブラックな会社とひとり闘う社員を追った『アリ地獄天国』公開へ
https://news.yahoo.co.jp/byline/mizukamikenji/20191227-00156547/
水上賢治 | 映画ライター 2019/12/27(金) 6:47

映画『アリ地獄天国』より 

 「ブラック企業」という言葉が世間に浸透してどれぐらいたつのだろうか?

 働き方改革というスローガンのもと、長時間労働が当たり前だった日本の会社風土は少しずつ変わってきているかもしれない。ただ、コンビニエンスストアの24時間営業をめぐる本部と加盟店オーナーの対立、ウーバーイーツの配達員の労働環境問題などをみると、まだまだ日本の労働をめぐる状況は改善されていない。

 ただ、ひとつ、少しだけ変わりつつあるところがある。それは、搾取される側に立ってしまった当事者が声を上げるケースが増えてきたこと。少なくとも、ひと昔前よりかは、劣悪な労働環境に置かれた当事者の声を多く耳にする機会が増えてきた気がする。でも、ブラック企業の内部でどんなことが実際に行われて、被害を受けた労働者はどんな仕打ちを受けるのか、実際に目の当たりにすることはほとんどないといっていい。

ブラック企業で、ブラックに働かされた社員をリアルタイムで記録した衝撃のドキュメント
土屋トカチ監督の『アリ地獄天国』は、まさにブラック企業で、ブラックに働かされた社員をリアルタイムで記録した驚きのドキュメンタリー映画だ。おそらくここまでブラック企業のブラックさを暴き出した作品はほとんどない。『まさかここまではされることはないだろう』ということが平気で行われている現実をわたしたちは目撃する。

 これまでも労働に関する作品を発表している土屋監督。そもそも日本をめぐる労働に着目した点をこう明かす。

「自分自身が2001年の秋ぐらいでしたか。勤め先からクビをほのめかされて、労働組合に相談にいったことがあるんです。それが僕の原点といっていい」

過労で自死した友人の存在
実は、今回の『アリ地獄天国』は、西村さん(仮名)が主人公。ただ、出発点としては、過酷な労働で自殺した友人の存在があった。

「大学生のとき、僕は新聞奨学生という制度を使って4年間、新聞配達をしながら大学に行っていたんです。彼は同じ1つ年下の新聞奨学生でした。新聞奨学生は最初の1年がほぼ店舗に住み込んでいる状況で。そこでずっと一緒だったし、2年目に近くのアパートを借りたんですけど、彼も同じアパートに住んでしょっちゅう顔を合わせていました。休みも休刊日で一緒。それ以外はほとんど毎日会うわけです。当時は、ある意味、家族のようで、兄弟のような関係でした。その後も付き合いは続いて、亡くなるまで連絡をとりあっていました」

 彼が命を絶つ。そんなことはまったく想像できなかったという。

「いまでも彼が自ら命を絶ったことが信じられません。というのも彼は熱心な仏教の信者で、大学も仏教系の大学だったんです。僕の大学時代は、ちょうど新興宗教ブーム。実際、大学を歩いているとオウムの信者とかいて、勧誘してたりする時代でした。

 むしろ苦しんでいる人がいたら、助けるタイプ。悩みを相談したら、ものすごく理路整然とした答えを返してくれるような人物で。僕は何度か彼の理性的な言葉で救われたというのに……。そういう人が自ら命を絶つなんて、まったく理解できなかった。

 人を諭すぐらいの人物である彼が、死を選ぶほどの苦しみってなんなのか。それほど自分をコントロールできなくなってしまうということはどういう状態なのか。考えれば考えるほど、気持ちが滅入っていきました。

 だけど、思い返すと、いろいろと気づくんです。どこかで、サインは出ていたかもと。

 過重労働に追われて、ものすごい酒の量が増えていた。亡くなる前の4〜5年、電話で話すことが多かったんですけど、話すことはまともなんだけど、なにか酒が入っている感じがする。どこかいらいらした雰囲気がある。聞くとパートナーの方にかなり当たっていたりしたみたいで……。

 あるとき、労働組合のことを相談されたんで、仲介して加入してもらったんですけど、そのときはもう闘える気力もなくなっていたみたいです。もう精神がボロボロの状態だった。

 そこでなにかできたかもしれないんですけど、僕の中に労働組合に任せれば何とかしてもらえるだろうという甘い考えがあった。結果、最悪な事態になってしまった。

 だから、そのとき、誓ったんです。『もし彼と同じような立場の人に出会ったら、今度は最後まで支えよう』と。そして、可能ならば彼と同じような立場になった人の声を作品にして社会に届けられたら、少しは罪滅ぼしになるかなと。あと、これをやらないと、自分自身が次へ進めないところも正直ありました」

土屋トカチ監督
そんな思いを抱いてたときに、出会ったのが西村さん(仮名)だった。

「あえてリサーチというか友人と同じような境遇の人はいないかと、探すことはしていませんでした。ただ、労働問題の取材は続けていたので、そこで縁が生まれればいいかと。

 その過程で偶然出会ったのが、西村さん(仮名)でした。出会った瞬間に、『この人は』というのはありましたね。

 作品の中に、『罪状ペーパー』といって出てきますけど、懲戒解雇通告された用紙を、原本はA4サイズなんですけど、B2サイズぐらい、いわゆる映画のポスターサイズにわざわざ4000〜5000円ぐらいかけて拡大コピーして、労働組合の事務所の入り口に貼り、組合員に声をかけていた。『これ、見てくださいよ。こんなこと僕されているんです』といったように。しかも笑みを浮かべながら説明している。すぐに興味を持ちましたね」

映画『アリ地獄天国』より 罪状ペーパー

西村さん(仮名)がふと漏らしたひとこと「殺されるかもしれない」
でも、すぐさま取材を申し込んだわけではなかった。

「接点をもとうかなと思っていたら、最初に、おみかけしたときからだいたい2週間後ぐらいだったんですけど、西村さん(仮名)の復職が決まって、組合から『記者会見の模様の動画をYouTubeに上げたいから、撮影してまとめてくれませんか?』というお仕事の依頼をいただいたんです。

 それで会見にいったんですけど、みたらやはり本人に詳しく話をききたくなる。それで少し話したんですけど、そうとうひどい扱いを受けている。

 翌日、会社の前で抗議行動をするというので、スケジュールが空いていたので、応援がてらカメラを持って同行したんです。

 そしたら会社の人間がぞろぞろ出てきて、ヤクザまがいの言動で絡まれて、『足踏んだやろ?』と因縁をつけてくる。話できいてたよりも、もっとひどい人間が出てきた(苦笑)。

 その後、西村さん(仮名)がお昼休みででてきたときに話をきいたら、職場は監視カメラだらけで、アップされた前日の記者会見の映像をループして西村さん(仮名)のほうに向けて流し続けていると。しかも聞くに堪えない罵詈雑言を浴びせてくる。

 もう自分としてはクエスチョンだらけ。それで仕事とか関係なく、抗議行動の映像を即日Youtubeにアップしたんですよ。

 すると、反響がすごくて、3日間で44万回再生ぐらいいったんです。労働争議の映像でこんなに反響あることないんですよ。ここまで関心を寄せてもらえるならばと、まず継続取材をしてみようと思いました。

 ただ、この時点では映画にしようとかは考えていませんでした。けれども、最初に動画をアップした日、昼休みに車の中で少し話したんですけど、ふと『(自分は)消されるかも』と漏らしたんですよね。最初に会ったときは、自分の窮状を笑顔ではしゃぎ気味に周囲に話していた人が、実は『殺されるんじゃないか』という恐怖を感じている。

 このひと言で、労働組合に入ったことを会社は目の敵にして、そうとうプレッシャーをかけてきていることがわかったし、こういう言葉が34歳とまだ若い彼から出てくるのは、やりきれない。しばらくはそばにいて関わろうと思いました」

 土屋監督が西村さん(仮名)に、ひとつの作品にすることを打ち明けるのはもっと後になるが、ここから二人の関係は始まり、取材はスタートする。その西村さん(仮名)はTVCMでも知られたアリさんマークの引越社に正社員として勤務。営業職でトップを収めるほど優秀な社員だったが、長時間労働がたたって、事故を起こしてしまう。このとき、会社は西村さん(仮名)に48万円の弁済金を要求。ここではじめて会社に彼は疑念を抱く。

 ただ、傍から客観的にみると、会社の搾取は彼が入社したときからもはやはじまっている。

「作品でもさらっと触れていますけど、最初の募集項目から実はおかしいんですよ。給与は32万円保証、配偶者がいたらプラス3万円で35万円を半年は保証します。それ以降は実力主義、給与は変動制ですと。文面だけだど32万が基本給で、そこに能力に応じて上乗せされていくのかなと思うわけですけど、実質は基本給が変動する。基本給が変動するって意味がわからない。基本給って変動してはいけないと思うんですけど。(追記情報:基本給は月70時間の残業代込)

 ふつうは基本給をもとに、残業代とかすべて計算されていくはずですけど、そもそもなにをもとに給与を算出しているのかわからない。それで、その給与明細はインターネットならぬ会社のイントラネットで管理されていて、当時は1カ月たつと、全部データが消去されちゃう。そういうところはしたたかで会社は証拠を残さないようにしている。

 西村さんはもともとコンピューター系の仕事に就いていたこともあって、その明細を自分でデータ保存して、とってあったので、のちのち自分の身を守ることになるんですけどね」

映画『アリ地獄天国』より
これひとつとっても会社のブラックぶりがわかるが、作品では触れていないもっとひどいことも多々あったと明かす。

「会社の備品とか壊すと弁償させられる。たとえ経年劣化によるものであっても。払えないと会社に借金していることになる。そんなことがまかり通っている。こうした作品で触れたこと以外にも、おかしなことがいっぱいありました。

 たとえば、月20日間勤務という設定ありますけど、会社への借金が増えてくると給与だけでは生活できない。そういうときどうするか。会社から『じゃあうちで、また働くか』と声をかけられる。同じ支店内に支店が2つある。両支店とは別に、派遣会社を作ってあるんです。その派遣会社に登録させて、休日にまったくふだんと同じ仕事を普段の就業とは別の支店でさせるんですよ。給料はそこから出る形にする。つまり副業扱いにする。

 こうすることで、同じ職場で同じ仕事をしているのに、休みがちゃんと10日取れてるっていう名目になっちゃう。実質は1カ月休みなしで働かされているのに。

西村さんはやっていませんでしたけど、ほかの従業員はけっこうやっている人がいました。

整理するとこんな感じです。

・営業所に必ず支店が2つある。
・月10日の休日を設けている。月400時間近く働いている。
・借金が増えてくると、月々の引き落としでは間に合わなくなる。
・それならと、引越社の資金で設立した派遣会社に登録させる。
・派遣会社から現在働いている支店とは別の隣の支店で休日に派遣社員として働く。
・月10日の休日にも、派遣会社で働くので、休んでいない。
・過労でミスを起こす。借金が増える。

この負のループから抜けたいけど、抜けられない。これを社員は『アリ地獄』と呼んでいました」

危険分子とみなされ、シュレッダー係に
会社の理不尽さに気づいた彼は、個人加盟の労働組合「プレカリアートユニオン」に駆け込む。このとき、もしかしたら、彼はこのときようやく「自分は搾取されてると思ってなかったけど、搾取されてる人間なんじゃないか」と気づいたのかもしれない。

「組合に電話をして弁済金という弁償金の相談をしたら、『それ払わなくていい』といわれて、彼は『雷がズドーンと落ちた』というんですけど、この感覚は、僕もわかるんですよ。僕も組合に相談したときまったく同じでしたから。会社にいるときは全面的に信頼していた社長とかが平気で嘘をついて、法律違反をしていることに、はじめて気づくんです。

 まじめな人ほどショックだと思います。僕より西村さんはさらにまじめな人なので、ほんとうにショックだったと思います。

 それで彼は管理職だった時期もありましたから、気づかぬうちに部下に同じようなことを強いていたことがあった。だから、気づいたとき、ショックと同時に罪悪感に苛まれた気がします」

 意を決して彼は会社に対して異議を申し立てる。すると会社は危険分子とみなし、徹底的につぶしにかかり、最終的に彼は粉塵の舞うシュレッダー係に転属。給料は半減という状況に追い込まれていく。この過程はもうみてもらうしかないのだが、信じられない場面の連続だ。

「まずアポイント部に配属されましたけど、営業職に比べて給与が半分ぐらいに減る。そもそも営業で外に出て人と会って実績をバリバリ上げていた人が、次の日から、いきなり1日中、電話対応。しかも監視つきで。モチベーションがあがる要素がない。だから、ふつうの人だったら、辛くて自ら辞めてしまう。それが会社の狙いなわけですね。

 でも、西村さん(仮名)は音を上げない。すると、今度はシュレッダー係。シュレッダー作業をする正社員は彼が初めて。1日中、シュレッダーし続ける。しかも、服が決められていて、あの海外の囚人服を思わせるようなオレンジ色のシャツを着せられる。もう見せしめですよね。会社に逆らうと、『お前ら、こんな目に遭うんだぞ』という」

 会社の仕打ちは止まらない。もう暴走しているとしか思えない、白昼堂々とこんなことをするのかという場面が収められている。

「会社の発言や姿勢が社会からみるとそうとうまずいことに気づかない。むこうはとにかく西村さん(仮名)の息の根を止めたい。それだけ。

 ただ、これほど極端にはならないかもしれないけど、会社というのはこういう暴走をすることがある。自分たちは間違ったことをしていないと思いこんでいるときがある。そのことを物語っていると思います」

 長いモノには巻かれない人物は徹底的に個人攻撃をして叩き潰す。自分のやっていることは間違っていない。都合の悪いことは知らぬ存ぜぬで白を切る。説明責任は果たさない。残しておくべき文書や証拠はいとも簡単に失くす、消す。こんなように映る会社側の対応は、なにやら最近、某協会のトップの会見や、現政権の対応と重なり、既視感を覚えるのは自分だけだろうか。

「いまの日本の世情を映しているのかもしれません。撮っているときはあまりわからなかったんですけど、確かにいまの日本のいろいろな場面に当てはまるんですよね」

 それにしても、最後まで屈しなかった西村さん(仮名)には頭が下がる。

「見た目は線が細そうに見えるんですけど、ほんとうにメンタルが強い人だなと思います。ただ、だからといって彼が無敵というわけではないことに思いをいたらせてもらえたらと思います。

いっしょに時間を共有する中で、僕が感じたことですが、彼には『西村という組合員の役を、シュレッダー係をやってる間は自分で演じ切るんだ』という意識があったような気がします。

 それを実感したのは、中盤以降に出てくる弁護士と打ち合わせをしているシーン。『全体を通して、何が苦しいですか』という弁護士の問いに、彼は即答できない。『何が苦しい、苦しいって何だっけ』となる。

 このときは役の中にいるから、『あれ、俺、何で苦しいんだっけ?』とわからないし、自分が苦しいことをみないようにしている。ほんとうはそうとう辛いことを感じる瞬間でした。

 西村という人格になることで、現実逃避をして、なんとか平静を保っている。

 シュレッダー作業もほんとうだったらやりきれない。でも、西村というシュレッダー係の役になりきることで、作業をやり続けることができる。変な話、自分の意識はそこにないんです。

 DV被害者の方でみてくださった方がいたんですけど、『彼の気持ちがよく分かります』と。『私もDVを受けてるときにこういう感じでした。自分じゃない自分が自分を見てる感じでいました。そうでもしないと耐えられなかった』とおっしゃっていました。

 会社から受けてる暴力に耐えるためには、自分じゃないところで自分を見ていないと耐えられかったんじゃないかと思います。そうでもしないと耐えきれなかったのではないかと思います。

 この件があってから、彼はほかの引越会社の社員からも『ヒーロー』と呼ばれることが多々あったそうです。この会社だけではなく、どこの引越会社にもおおかれ少なかれ、同じようなことがあるということ。そういう人たちに彼は英雄に映る。確かにそうでしょう。

 でも、彼は強い人間ですけど、僕らと変わらない。けっして無傷だったわけじゃない。そのことを心にとめておいてほしいです」

映画『アリ地獄天国』より
ひとりの社員を通し、ブラックな仕事場を告発した作品は、日本人にとっての労働の価値観について考える機会にもなるかもしれない。働くことに対する必要以上の美徳が実はまったく変わっていない気がしてくる。

「僕の若いころ、『24時間、働けますか』というキャッチコピーのCMが大ブームになりましたけど、そこをまだ引きずってる気がします。実情とまったくあっていないのに、24時間営業をキープしようとする。だからぼろがでる。

 長時間、仕事場にいたら、『よく働いている』という考えはもうそろそろ考えなおしたほうがいい。変な話ですけど、この映画はもちろんいろいろな人に届けたいんですけど、経営者にみてもらいた気持ちがあります」

<山形国際ドキュメンタリー映画祭2019>での反響
ひと足早いお披露目となった、10月に開催された世界のドキュメンタリー映画が集結する<山形国際ドキュメンタリー映画祭2019>でまず上映。大きな反響を呼んだ。

「僕が予想していたよりもいい反応で驚きました。というのも、11年前に発表した『フツーの仕事がしたい』も同じような労働問題をテーマにしてるんですけど、そのときと反応がまるで違った。当時は、極端なことを言うと労働運動をやっている人しか興味をもってもらえなかった。でも、今回はごくごく普通の人まで関心を寄せてくれた手ごたえがあったんです。

 正社員に限らず、非正規社員やアルバイトでも起きていることですから、それだけ身近な問題になって、みんな危機感を抱いていると考えると、複雑な心境なんですけど、いずれにしても10年経って、ブラック企業という言葉が浸透して、仕事の現場で理不尽なことが行われている状況が社会で認識されたのかなと。いい意味でいうと、働く環境の可視化が進んできて、少しづつですけど日本人の働くことに対する意識が変わりつつあるのかもしれない。

 あと、10年前は、会社に個人が対抗するすべをほとんどが知らなかった。僕自身、労働組合に入って、知ったわけですけど、たいへんですけど個人でも闘える。組合は力になってくれるし、親身になってくれる弁護士も必ずいる。昔はほとんどが泣き寝入りでしたけど、ただ辞めるとか逃げるだけではない、会社に非を認めさせ、職場を改善させる選択肢があることがある程度、共有できたことも心強かったです。そんなことを実感できる場になりましたね」

 作品の出発点となった亡き友のパートナーと子どもは見てくれたという。

「ある大学で上映したときに、来てくれて、それはうれしかったですね。

 僕がトークのときにちょっと胸がいっぱいになっちゃったんですね。そうしたら、『土屋さんが泣いたからもう全然OK』といってくれました。

 まあこういう仕事をしてると、どこかずるい自分がいて。負い目がないかといったらうそになる。でも、傷つきながら撮っている。それを理解してもらえたかなと」

 そして、まずは名古屋から公開がスタートする。

「偶然か必然か、この会社の創業地が名古屋なんですよ。だから、ある意味、出発地点としてはしかるべき地かなと(笑)。ここから全国へ届けていけたらと思っています」

映画『アリ地獄天国』より
『アリ地獄天国』

12月28日より名古屋シネマスコーレで公開

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水上賢治
映画ライター
レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010〜13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA2018>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。
 

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