第45回 「就業構造基本調査」からみた製造業派遣の実態

非正規労働者の大規模な首切り・雇い止めが起きていることが大きな社会問題になっています。製造業では、昨年10月から今年3月までに、厚生労働省の集計で約12万人、業界団体の推定で約40万人もの労働者が職を失うと見込まれています。そのなかには請負会社の労働者も含まれていますが、いまのところ製造業の失職者の大半は派遣労働者です。
 
ところで製造業においてはどれくらいの人数の派遣労働者が就労していたのでしょうか。2003年に労働者派遣法が改悪され、04年から製造業の現場作業への派遣が自由化されました。派遣会社の事業報告にもとづく厚労省のデータでは、2007年度現在、製造業には47万人の派遣労働者がいます。しかし、同じ事業報告の2004年以前の数字は不明です。それもそのはず、04年以前には製造業の現場作業には派遣労働者はいなかったはずです。
 
しかし、5年ごとに実施される総務省「就業構造基本調査」(以下「就調」)の2002年結果によれば、製造業で20万人(19万5700人)がすでに派遣として働いていました。製造業でも専門的・技術的な仕事や、事務的な仕事などの職種もありますので、20万人のすべてが現場作業者とは限りません。そこで職業別・雇用形態別のデータを見ると、生産工程・労務作業に19万人(19万2100人)が従事しています。そのうち15万人(14万8000人)は製造・制作作業者です。2002年にもこれだけの派遣労働者が製造業の現場作業で働いていたことになります。
 
「就調」の2007年結果によると、製造業には58万人(製造・制作作業者では49万人(48万8800人))が派遣として働いていました。2002年は20万人でしたから、5年間で約3倍(製造・制作作業者では、15万人から49万人へ、3.3倍)に増加しています。
 
注意を要するのは、この増加は、同じ期間に製造業雇用者が1119万人から1091万人に、正社員が800万人から744万人に削減されたなかで生じていることです。2008年の「労働経済白書」も指摘しているように、自動車産業や電機産業などの製造業は、2002年からの2007年までの景気拡大過程で、輸出の拡大もあって生産を拡大させる一方で、労働分配率を大きく低下させてきました。これも正社員を削り、派遣を増やして人件費を切り下げてきたにほかなりません。にもかかわらず、業況が悪化するやいなや、この間大幅に増加した配当や内部留保には手をつけず、派遣労働者をはじめとする非正規労働者を一斉に切り捨てているのです。
 
製造業のなかでも派遣の絶対数と増加幅が大きい4業種について2002年から2007年の変化を表にしておきました。なお、この表に「輸送用機械器具製造業」とあるのは、大部分は自動車製造業とみて差し支えありません。2007年の「就調」には、「輸送用機械器具製造業」の派遣労働者の9割(8万7900人中の79,600人)は「自動車・同附属品製造業」に従事しているという数字もあります。
 
表 製造業における派遣労働者数の増大  (単位:人、倍)  
 
2002
2007
07/02
製造業全体
195,700
580,600
3.0
一般機械器具製造業
15,600
61,900
4.0
電気機械器具製造業
25,700
59,300
2.3
情報通信機械器具製造業
12,900
41,100
3.2
電子部品・デバイス製造業
23,800
72,600
3.1
輸送用機械器具製造業
25,600
87,900
3.4
(出所)「就業構造基本調査」各年版
 
上に見てきたように、製造業では58万人、製造・制作作業者では49万人が派遣として働いていますから、予想されるように、今年3月までに製造業ではほとんどの派遣働者が職を失うとなると、失業者の数は派遣だけで50万人前後に達する恐れもあります。
 
製造業には、派遣のほかに137万人のパートと25万人のアルバイトを含め、347万人の非正規労働者が働いています。これに照らせば、製造業の派遣・請負の失職者は3月までに40万人に達するという業者団体の推計は少なすぎるともいえます。それだけに企業と政府には安易な首切り・雇い止めをしない、させないことが求められいます。
 

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